2019 年 19 巻 11 号 p. 469-474
産業的に使用される現実的な高分子鎖の形状とサイズを研究するためには,取り扱える原子数とダイナミクスの時間スケールの制限により,全原子分子動力学シミュレーションを適用することは困難である。そのため,全原子分子動力学に代わり,粗視化分子動力学シミュレーションがバルク高分子鎖の構造とダイナミクスを研究するためにしばしば使用される。粗視化分子モデルの概念を簡単に紹介した後,粗視化分子動力学シミュレーションの例をいくつか紹介する。具体例として,溶融状態における線形および分岐高分子鎖のサイズ,固体壁近くの溶融高分子およびグラフト鎖の変形,ミクロ相分離構造におけるブロックコポリマーのコンフィグレーションに関する検討などを紹介する。