2019 年 19 巻 3 号 p. 89-92
フライ油を長時間使用すると,熱酸化による二次生成物(極性重合物やカルボニル化合物など)が蓄積するが,これと共に酸価が上昇する。従来,酸価の上昇は揚げ種からの水分の移行を主因とするトリグリセリドの加水分解に基づくと考えられてきた。しかし,フライのシミュレーション系である水噴霧加熱実験を低酸素雰囲気下(熱酸化が進まない環境下)で実施した場合,十分な水分が存在しても酸価は上昇しなかった。また,長鎖遊離脂肪酸,短鎖遊離脂肪酸,ヒドロペルオキシドの加熱油への添加も,低酸素雰囲気下では酸価上昇を促進しなかった。これらの結果から,フライ油の酸価上昇は単純なエステル加水分解ではなく,初期酸化中間体または酸素分子そのものが関わるエステル分解反応の結果であることが示唆された。