2020 年 20 巻 7 号 p. 321-328
リン脂質や界面活性剤といった両親媒性の分子が水中で自己組織的に様々な凝集構造を形成する際に,水はどのような役割を持っているのであろうか。それとも水はただの溶媒であるだけなのか。これを明らかにするために,筆者らは両親媒性分子の水和状態の観測を行い,自己組織化構造形成との関係性を調べてきた。テラヘルツ分光法を用いて弱く束縛された水まで含めて水和状態を観測することで,水和層がこれまで考えられてきたよりも長距離に及ぶこと,さらにその長距離水和状態がミセル-ラメラ相転移といった構造相転移や二重膜同士の相互作用と密接に関係していることが分かってきた。