2021 年 21 巻 11 号 p. 447-453
バイオマテリアル分野の歴史を紐解くと,体の中に人工物を投与・埋植した際に起きる免疫反応をいかに回避するかというところが原点となっている。21世紀に入るとがん免疫(がんワクチン)の分野の研究が急速に進歩し,むしろ生体の免疫を活性化してがんを攻撃するようなバイオマテリアルの開発が行われるようになってきた。さらに近年,自己免疫疾患の増加や新型ウイルスの流行などを背景に,新たに免疫反応を積極的に寛容するバイオマテリアルの開発が求められるようになっている。本稿では,このような多彩なバイオマテリアル開発の最近の研究例について概説し,特に死細胞(アポトーシス細胞)の有する巧みな免疫寛容作用に学ぶ革新的な免疫制御バイオマテリアル開発戦略について紹介する。