2022 年 22 巻 8 号 p. 389-395
漆は日本においては縄文時代から塗料や接着剤として使われてきた天然材料である。漆は木からとれる樹脂がある程度の温湿条件で硬化し,非常に強固な塗膜を形成する。この塗膜は酸塩基,有機溶媒に不溶であるため分析が非常に困難であった。漆塗膜の分析方法として熱分解-ガスクロマトグラフィー/質量分析(Py-GC/MS)が有効であることがここ25年程度で明らかになった。本論文では漆の基礎的なPy-GC/MSの解析と,漆に加えられている添加物のPy-GC/MSの解析について述べる。また,具体的な出土遺物への分析事例を合わせて紹介する。