2022 年 22 巻 9 号 p. 465-470
口腔環境を衛生的に保つことは,う蝕や歯周病などの口腔疾患を予防する上で有効であり,口腔の健康に関連したQOL(口腔関連QOL)の向上に関わると考えられる。口腔環境を衛生的に保つために,日々のハミガキによりステインを除去することは極めて重要である。本研究では,ステイン除去効果が知られており,市販歯磨剤に配合されているピロリン酸ナトリウム(PPNa)に着目し,ステイン除去メカニズムの解明を行った。その結果,歯面モデルに付着したステインに対してPPNaを作用させるとステインの膜厚が増加した。また,ステインを形成するタンパク質とポリフェノール類の凝集物の粒子径が小さくなった。この結果から,PPNaが有するキレート作用により凝集に関わるCaを捕捉し,凝集物を分解したと推察した。また,ステインの膜厚が増加することで物理力がかかりやすく除去されやすい状態にしていると考察した。さらに,界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウム)との併用効果についても検討を行い,相乗的にステイン除去力が向上することを明らかにした。