2023 年 23 巻 6 号 p. 321-327
近年の環境意識の高まりの中,低環境負荷なタンパク質として細胞から作る食品である細胞性食品,なかでも培養肉が注目されている。本稿では,培養肉の注目背景やその作り方の概要について述べる。その上で,特に「培養ステーキ肉」の実現に焦点を当てレビューする。新鮮な牛肉から得られたウシ筋衛星細胞,筋芽細胞を含有するハイドロゲルシートの積層によって約1cm角の培養サイコロステーキ肉を作製する方法を紹介するとともに,国内研究機関で初めて実施した培養肉試食の取り組みについて報告する。培養肉の官能評価が研究室で可能になったため,今後美味しさの観点から研究開発がより進展すると期待される。