近年,将来の食料問題や環境問題の解決策として代替肉や培養肉が注目されている。我々は,3Dバイオプリントを応用した組織工学技術を基に霜降り構造を有する和牛培養肉の作製を報告した。本稿では,培養肉の背景と我々の取り組みについて紹介する。
ダイズは穀物の中でもタンパク質や脂質の含量が高いという特徴を持ち,世界的な生産量も多いことから,植物肉の原料作物として適していると考えられる。しかし,ダイズ由来の食品において,脂肪酸に由来するいくつかの不快臭が問題になっていた。本稿では,我々が取り組んできたダイズ脂肪酸組成の遺伝的改良による不快臭低減の取り組みと,その植物肉原料としての優位性について紹介する。
近年の環境意識の高まりの中,低環境負荷なタンパク質として細胞から作る食品である細胞性食品,なかでも培養肉が注目されている。本稿では,培養肉の注目背景やその作り方の概要について述べる。その上で,特に「培養ステーキ肉」の実現に焦点を当てレビューする。新鮮な牛肉から得られたウシ筋衛星細胞,筋芽細胞を含有するハイドロゲルシートの積層によって約1cm角の培養サイコロステーキ肉を作製する方法を紹介するとともに,国内研究機関で初めて実施した培養肉試食の取り組みについて報告する。培養肉の官能評価が研究室で可能になったため,今後美味しさの観点から研究開発がより進展すると期待される。