オレオサイエンス
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総説
牛乳のタンパク質
瀬戸 泰幸
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2023 年 23 巻 8 号 p. 415-421

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抄録

本稿では,牛乳タンパク質について栄養機能の観点から概説する。牛乳はカルシウムを多く含む食品として知られているが,良質なタンパク質を含む食品でもある。牛乳のタンパク質は,カゼインとホエイタンパク質に大別される。カゼインは,牛乳中でカゼインミセルと呼ばれる特徴的な構造を形成し,仔の骨の成長に必須となるリン酸カルシウムを体内に運搬する重要な役割を有している。一方,ホエイタンパク質には多くの種類のタンパク質が含まれる。主要な成分に,β-ラクトグロブリン,α-ラクトアルブミン,ウシ血清アルブミン,ラクトフェリン,ラクトパーオキシダーゼがあり,それらの多くも,仔を育てるための何らかの役割を有している。また,主要成分でなくとも,乳塩基性タンパク質(MBP)のようにユニークな機能を有するタンパク質が発見されている。さらに,牛乳タンパク質は消化吸収にも興味深い特徴がある。ホエイタンパク質は強固な構造を有するものが多く,胃を速やかに通過して腸管で分解,吸収される。一方,カゼインは胃で凝固するためゆっくりと分解,吸収される。このような消化吸収特性の違いから,牛乳摂取時には,タンパク質合成が速やかに開始され,かつ長く持続するという優れた特徴を有している。

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