オレオサイエンス
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23 巻, 8 号
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特集序言
総説
  • 瀬戸 泰幸
    2023 年 23 巻 8 号 p. 415-421
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/04
    ジャーナル フリー

    本稿では,牛乳タンパク質について栄養機能の観点から概説する。牛乳はカルシウムを多く含む食品として知られているが,良質なタンパク質を含む食品でもある。牛乳のタンパク質は,カゼインとホエイタンパク質に大別される。カゼインは,牛乳中でカゼインミセルと呼ばれる特徴的な構造を形成し,仔の骨の成長に必須となるリン酸カルシウムを体内に運搬する重要な役割を有している。一方,ホエイタンパク質には多くの種類のタンパク質が含まれる。主要な成分に,β-ラクトグロブリン,α-ラクトアルブミン,ウシ血清アルブミン,ラクトフェリン,ラクトパーオキシダーゼがあり,それらの多くも,仔を育てるための何らかの役割を有している。また,主要成分でなくとも,乳塩基性タンパク質(MBP)のようにユニークな機能を有するタンパク質が発見されている。さらに,牛乳タンパク質は消化吸収にも興味深い特徴がある。ホエイタンパク質は強固な構造を有するものが多く,胃を速やかに通過して腸管で分解,吸収される。一方,カゼインは胃で凝固するためゆっくりと分解,吸収される。このような消化吸収特性の違いから,牛乳摂取時には,タンパク質合成が速やかに開始され,かつ長く持続するという優れた特徴を有している。

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  • 髙山 喜晴
    2023 年 23 巻 8 号 p. 423-429
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/04
    ジャーナル フリー

    ラクトフェリンは乳や涙などの哺乳類の外分泌液に含まれている糖タンパク質である。血中の鉄輸送蛋白質であるトランスフェリン(セロトランスフェリン)に類似した立体構造を持ち,1分子あたり2分子の鉄イオンと強固に結合する。細菌の増殖に必要な鉄をキレートすることで静菌作用を発揮する他,直接的な殺菌作用,免疫調節機能等により生体防御に寄与している。さらに,ラクトフェリンの経口投与により脂質代謝や糖代謝が改善されることが動物実験やヒト試験で明らかになっている。ラクトフェリンは脂肪前駆細胞の脂肪細胞分化を阻害するほか,脂肪分解を促すことで成熟した脂肪細胞における脂肪蓄積を阻害する。肝細胞や脂肪細胞へのラクトフェリンの取り込みや細胞内情報伝達経路の活性化は,LDL受容体関連タンパク質-1(LRP-1)によって担われている。

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  • 日暮 聡志
    2023 年 23 巻 8 号 p. 431-438
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/04
    ジャーナル フリー

    母乳は,児にとって最良の栄養であり,児の健やかな成長や発達にとって必要なすべての成分が含まれている。母乳には未だ明らかとなっていない成分や機能が数多く存在し,その未知なる機能を明らかにするために世界中で研究が続けられている。一方,乳児用調製乳は様々な理由で母乳哺育ができない児に対して母乳代替食品として与えられている。そのため,乳児用調製乳をより良いものに作り上げていくにあたっては,母乳をより深く知ることが重要である。我々はおおよそ30年間隔で全国規模の母乳調査研究を実施している。本稿では,我々がこれまでに実施してきた研究の歴史を振り返るとともに,最新の母乳調査で得られた知見について解説する。

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  • 白井 展也, 荒木 理沙, 髙山 喜晴
    2023 年 23 巻 8 号 p. 439-445
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/04
    ジャーナル フリー

    乳脂肪は乳固形分の主要な成分であり,乳中では乳脂肪皮膜(MFGM)と呼ばれる脂質粒子のエマルジョンを形成し安定化されている。MFGMに含まれる脂質の主要成分はトリグリセリドとリン脂質である。さらに,MFGMには脂質誘導体であるステロールやカロチノイドが含まれている。乳および乳製品は,タンパク質・カルシウム・脂溶性ビタミンの健康的な供給源として一般に認識されているものの,食生活指針の多くは心血管疾患(CVD)とりわけ冠動脈性心疾患(CHD)のリスクを減らすため,乳に多く含まれる飽和脂肪酸の摂取量を減らすことを奨励している。本稿では,動物実験やヒト試験を用いて,代謝機能障害やそれに由来する慢性疾患(CHDや2型糖尿病など)の発症に対する様々な乳脂肪成分摂取の効果を扱った近年の研究を紹介する。

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