2024 年 24 巻 2 号 p. 49-55
微粒子で安定化されるエマルション(Pickeringエマルション)における最も重要な物理化学的因子の一つは,微粒子の油/水界面に対する濡れ性(接触角)である。単一の微粒子を用いて望まれる特性を有するPickeringエマルションを得るためには,微粒子表面の化学的あるいは物理化学的な最適化が必要となるが,応用的な利用に際してしばしば制限や問題が生じることがある。一方,2種類の微粒子を混合して用いることにより,相乗的な効果を発現させることが可能である。例えば,疎水性微粒子と親水性微粒子の相対的な濃度を調節することにより,エマルションの転相現象を誘起させることができる。しかし,微粒子の組み合わせによっては,エマルションの合一に対する不安定化や解乳化が生じる場合がある。本稿では,2種類の微粒子の混合物によるPickeringエマルションの安定化について,微粒子の濡れ性に注目した分類の提案と,これまでに報告されている安定化あるいは不安定化のメカニズムについて概説する。