2024 年 24 巻 7 号 p. 287-291
エタノールは私たちの生活になじみ深い物質であり,飲料,医薬品,化粧品等の分野で利用されている。また,エタノールを高濃度で含有した水溶液は手指の消毒や生活環境の除菌に有効である。市販の手指消毒剤を容器からの吐出形態で分類すると,液状,ミスト状,ジェル状,泡沫(フォーム)状のものなどがある。気泡は一般に,気体と液体の界面に界面活性剤が吸着し,液体の表面張力が低下することで安定化される。しかし,エタノールが水溶液中に共存すると,気/液界面への界面活性剤の吸着が阻害されるようになるため,高濃度エタノール水溶液を泡立てることは困難である。本稿では,高濃度エタノール水溶液(60 vol.%)の泡沫安定性を高めるには,陰イオン性界面活性剤,高級アルコール,ならびに無機塩の共添加が有効であることを紹介する。その主たる要因は,表面粘度の高まりにより,泡膜からの排液が抑制されたことにあったと考えられる。これらの研究成果が,泡沫状で提供可能な手指消毒剤の開発に資することを期待する。