2024 年 24 巻 8 号 p. 359-365
近年,地球温暖化対策として,世界的にCO2削減が取り組まれており,その内の一つとして微細藻類(以下,藻類)によるCO2の直接利用が議論されている。藻類生産は農業による農作物の生産と比較し,その高生産性,省資源性,高汎用性という優位性が挙げられるにも関わらず,その産業利用は限定的である。藻類の産業利用が拡大しない主要な理由として,「大規模藻類生産の欠如」および「藻類の商業用途の多様性欠如」が考えられる。大規模な藻類生産は藻類種や生産地,生産規模に関わらず,50年以上前から主にオープンレースウェイポンド(以下,ORP)が用いられてきた。ORPの他にも様々な生産手法があるが,そうした手法を用いた実証が大規模に実施された例は限られている。結果として,ORPを用いて安定生産可能な条件を除き,藻類生産が拡大していない。藻類生産拡大には,目的に応じた生産方式の開発や実証が必要である。フラットパネル型フォトバイオリアクター(以下,FP-PBR)を用いた生産もその内の一つである。現在,マレーシアにおいて,FP-PBRを用いた大規模な藻類生産(生産面積約5ha)のNEDO実証事業が,株式会社ちとせ研究所(以下,ちとせ研究所)により進められている。また,藻類の商業用途の多様性拡大を目的として,MATSURIプロジェクトがちとせ研究所によって立ち上げられ,分野横断的な商業用途の開発も平行して進められている。