両親媒性イオン液体のさらなる性能の向上と機能性の発現を目指して,特殊な構造ならびに機能を有する四級アンモニウム塩系新規両親媒性イオン液体を多種類合成し,それらの物理化学的性質や水溶液物性,両親媒性イオン液体を媒体とした種々の界面活性剤の界面吸着およびバルクでの層構造や混合水溶液系における吸着および会合挙動について解明した。両親媒性イオン液体がバルクで形成する層構造は,X線小角・広角散乱,低温透過型電子顕微鏡などの手法を用いて明らかにした。

ハロメタンやハロエチレンなどの低分子ハロゲン系炭化水素類(HHCs)は溶剤や原料として幅広く利用されているものの,毒性の高さや化学的安定性の高さによる土壌・海洋中での残存といった問題があった。本研究では,これらのHHCsを直接的に有用化成品へと変換可能な新たな合成法の開発(ケミカルアップサイクル)を目指した。我々のグループ独自の酸化改質技術である,二酸化塩素への光活性化をカギとするC-H酸素化反応を活用し,クロロホルムを反応系中で高活性なホスゲンへと変換し,種々のホスゲン化生成物を得る手法を見出した。アミンとの反応により,カルバモイルクロリドやウレア誘導体を,アルコールからはカーボネート誘導体を得ることができる。本稿では,これらの反応の詳細と二酸化塩素光改質法の今後の可能性について紹介する。

液体と液体,固体と液体など,異なる相の境界に界面張力(界面エネルギー)が生じるように,異なる界面が接する1次元境界には線張力と呼ばれる線過剰エネルギーが生じる。
線張力は大きく分けると,同一の界面で共存する2つの膜構造の境界に働く,いわゆるドメイン線張力と,泡膜や乳化膜,(固体)基板上の液滴,界面吸着微粒子など3つの界面の境界に働くものがあり,その発生原理が異なる。本項では線張力の理論の詳細は割愛し,その基本的な概念・考え方を物理化学的な視点から概説する。
