2025 年 25 巻 11 号 p. 481-486
共役脂肪酸は抗腫瘍作用を有することが知られてきたが,その具体的な作用機序については不明であった。本研究では,α-エレオステアリン酸などの共役脂肪酸がミトコンドリアにおける活性酸素および過酸化脂質産生を惹起することで,シャペロン介在性オートファジー(CMA)を介してグルタチオンペルオキシダーゼ4(GPX4)の分解を促進し,制御された細胞死「フェロトーシス」を誘導することを明らかにした。本作用は,CMAの必須因子であるLAMP2Aの遺伝子欠損や,ミトコンドリアROSの消去によって抑制された。免疫不全マウスへのがん細胞の皮下移植実験では,α-エレオステアリン酸を豊富に含む桐油の経口投与により,野生型細胞由来の腫瘍の増殖は抑制され,GPX4の発現減少や過酸化脂質産生の増大が認められた一方で,LAMP2A欠損細胞由来の腫瘍ではこれらの効果は認められなかったことから,本機構の個体レベルでの抗がん作用における重要性が示された。本研究成果は,世界的に注目を集めるフェロトーシスを活用した新たながん予防・治療戦略の創出に繋がる重要な基礎的知見である。