2025 年 25 巻 11 号 p. 473-479
グルタチオンペルオキシダーゼ4(GPX4)は,リン脂質ヒドロペルオキシドを還元する酵素として細胞膜脂質を酸化から守り,フェロトーシスの中心的な制御因子として知られている。しかし,他のペルオキシダーゼがフェロトーシス防御に寄与するかどうかは不明であった。我々は,GPX4を欠損した細胞においても依然として相当量のリン脂質ヒドロペルオキシド還元活性が残存することを見出し,GPX4以外の過酸化脂質還元酵素の存在を示唆した。そして,その候補分子として,リン脂質ヒドロペルオキシド還元活性が報告されているペルオキシレドキシン6(PRDX6)に着目し,そのペルオキシダーゼ活性を評価した。その結果,PRDX6はペルオキシダーゼ活性を有するもののGPX4と比較してその活性ははるかに小さかった。一方で,PRDX6の遺伝子欠損はがん細胞のフェロトーシス感受性を著しく増加させた。その機構として,PRDX6は従来知られているペルオキシダーゼ活性に加え,セレン運搬タンパク質として機能し,細胞内セレンの取り扱いを促進し,GPX4を含むセレノプロテインへの効率的なセレン取り込みに貢献することが明らかとなった。この役割はin vivoでも裏付けられ,PRDX6欠損マウス脳でのGPX4発現低下や,PRDX6欠損腫瘍異種移植モデルでのフェロトーシス感受性上昇として確認された。これらの知見から,PRDX6は細胞内セレン運搬タンパク質としてはたらき,フェロトーシス感受性を決定する重要な因子であることが示された。