オレオサイエンス
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総合論文
油脂の結晶化がエマルションの物性・安定性に及ぼす影響
松村 康生
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2005 年 5 巻 1 号 p. 13-19

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抄録

油脂結晶がエマルションの品質に与える影響は, 化粧品, 医薬品, 食品工業など様々な分野で, 非常に重要な問題である。大部分の食品エマルションにはタンパク質が含まれおり, そのタンパク質は脂質粒子表面において厚い吸着層を形成する。油脂結晶の役割を論ずる際には, この吸着層との相互作用を考えねばならない。本稿では, 主に著者らのデータに基づいて, 油脂結晶がエマルションの物性や安定性に与える影響を, 特に油脂結晶とタンパク質および乳化剤との相互作用の観点から詳しく述べた。具体的には, 油脂とタンパク質の脂質粒子表面での相互作用について, NME, ESR, 動的粘弾性測定など, 様々な手法を用いて検討を行った。それらの結果より, 油脂結晶が, どのようなメカニズムで脂質粒子表面でのタンパク質の吸着挙動やコンフォメーションに影響を与え, クリームの分散安定性に影響を与えるのか, 考察を行った。また, そのような油脂結晶によるクリームの物性や安定性の変化に対して, 有機酸モノグリセリドやレシチンなどの乳化剤が与える影響についても触れた。今後, 脂質粒子表面での油脂結晶と他成分との相互作用についての理解が深まってゆくにつれて, 実際の食品エマルションの品質を適格に制御することが可能になるものと期待される。

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© 2005 公益社団法人 日本油化学会
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