オレオサイエンス
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総合論文
溶存酸素制御によるマヨネーズの酸化防止
小林 英明高宮 満長谷川 峯夫
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2005 年 5 巻 10 号 p. 473-479

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抄録
各種の食品が, 空気中の酸素によって酸化されることにより風味劣化を起こすことは広く知られている。マヨネーズは水中油型乳化食品であり, 植物油, 卵黄など多価不飽和脂肪酸を含む脂質成分が配合されており, しかも卵黄由来の鉄イオンも豊富に含むため, 酸化による品質劣化が起こりやすい食品である。そこで, 海外で市販されている製品ではEDTAなどの酸化防止剤を配合し酸化劣化を防ぐことが一般的となっている。-・方, 日本でのマヨネーズ製造80年の歴史においては, 製造工程や容器包材において徹底的な酸素遮断を行うことでほぼ品位の安定した製品を作ってきた。
しかし, 食品の風味は非常に微妙であり, ごくわずかずつではあるが, やはり若干の酸化劣化は進行している。いつでも, どんな場面でもマヨネーズをよりおいしくお客様に味わっていただきたいと考えた時, 溶存酸素 (DO) に着目した。食品中のDO制御技術は, ビール, コーヒー, 牛乳などの微妙な風味を大切にする飲料分野では導入されている例があるが, マヨネーズなどの高粘性の乳化食品については, 従来技術的に容易ではなく一般的ではなかった。
そこで, まず高粘性の乳化食品のDO測定法を検討し, 非破壊蛍光式溶存酸素計を用いることでDO測定を可能とした。次に, 液体原料のDOを予めN2バブリング法にて下げ, 他工程でも酸素巻き込みをさせないことでマヨネーズ充填直後のDOを低い範囲に制御する製造工程を可能とした。こうすることで, マヨネーズなど高粘性の乳化食品においても, DO制御技術により長期保存中の酸化劣化を今まで以上に防げることを確認した。
このDO制御技術は, 2002年12月よりキユーピーマヨネーズにおいて導入され, お客様にマヨネーズのおいしさをより楽しんでいただけるようになった。
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© 2005 公益社団法人 日本油化学会
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