オレオサイエンス
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総合論文
アシル化アミノ酸の行動薬理学的評価
脂質による高次脳機能異常改善作用の機序を中心に
日比野 英彦西川 徹
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2006 年 6 巻 2 号 p. 93-105

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抄録
D-セリン, D-アラニン等のアミノ酸は, 記憶・学習を初めとする高次脳機能に関与するN-メチル-D-アスパラギン酸 (NMDA) 型グルタミン酸受容体の刺激を介して精神神経障害を改善することが期待されている。しかし, 血液脳関門通過性が低く, 末梢投与により臨床効果を得るためには極めて高い用量を必要とする。この難点を克服する試みとして, D-セリンに脂溶性を賦与し, その血液脳関門通過性を行動薬理学的に評価した。腹腔内投与したアシル化D-セリンは, NMDA受容体阻害剤誘発性の統合失調症モデルである中枢性の異常行動を抑制した。この抑制効果は, D-セリンが選択的に作用する本受容体アロステリック調節部位の拮抗薬を脳室内に注入することにより減弱した。以上の結果から, アシル化D-セリンが血液脳関門を通過して脳内のNMDA受容体機能を賦活することが支持され, 脂溶性を高めたアミノ酸が精神神経疾患の治療に有用な可能性が推測された。
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© 2006 公益社団法人 日本油化学会
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