オレオサイエンス
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特集総合論文
冠動脈疾患における食事中の脂肪酸組成の影響
臨床の立場から
川村 光信
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2008 年 8 巻 10 号 p. 405-412

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抄録
わが国の冠動脈疾患の予防や進展抑制に対する食事療法は, 糖尿病食を基に始められることが多い。通常の糖尿病食の栄養素配分は, カロリー百分率で, 糖質 : タンパク質 : 脂質=60% : 15% : 25%とされているが, 冠動脈硬化の進行に関与する, 最大の栄養素は脂質と目されている。米国を中心とした大規模研究などから, 脂質の総量は全摂取カロリーの25%以下, とくに飽和脂肪酸は7%以下に抑えることが推奨されている。しかし, 問題は脂質ではなく, 過剰なカロリーによる肥満やインスリン抵抗性であろうとの見解もある。さらに最近のさまざまな大規模疫学研究や食事介入試験からは, 冠動脈疾患に対する脂質, とくに飽和脂肪酸による影響は, あるとしても, 同時に摂取される一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸によって多彩に変化することが明らかとなってきた。また, 日常の食生活にかなり差異のある欧米のデータをそのまま日本に当てはめ得るのか, 集団としてではなく, 個々人に対してはよりきめ細かな食事療法が必要ではないのか, などの疑問が残されており, 今後さらに日本独自の研究が必要と思われる。
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© 2008 公益社団法人 日本油化学会
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