抄録
粒子内物質移動過程の速度論的研究は一般的に多数の粒子が存在する系で行われる。しかしながら, 粒子内物質移動過程は, 粒子サイズ, 粒子問距離などに依存するので, 定量的な解析には単一粒子ごとの計測が必要不可欠である。そこで著者らは, マイクロキャピラリーインジェクションーマニピュレーション法と顕微分光法を組み合わせた手法を開発し, 単一多孔性粒子に対する溶質の取込み・放出速度の直接観測により, 粒子内物質移動過程を研究している。本稿においては, このマイクロキャピラリー操作一顕微分光法の原理と, 単一ODSシリカゲル, シリカゲル粒子のナノ細孔内における有機分子の拡散過程について紹介する。細孔内拡散は, ボアー表面拡散, 細孔壁からの遅い脱着などの立場で議論する。