オレオサイエンス
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8 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
特集総合論文
  • 大島 広行
    2008 年 8 巻 2 号 p. 41-45
    発行日: 2008/02/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    柔らかい表面, すなわち, イオン浸透性の高分子電解質層 (表面電荷層) で覆われた固体表面における界面動電現象を理論的に考察する。モデルとして, 柔らかい表面をもつ2枚の平行平板問に電解質溶液を満たし, 電場と圧力勾配場を加えたときに起きる界面動電現象に関する諸量, すなわち, 電気浸透速度, 電気浸透で運ばれる流量, 電流密度, 全電流, 流動電位について論じる。また, これらの諸量の問に成り立つOnsagerの関係式について考察する。柔らかい表面における界面動電現象は, 2つのパラメタ, すなわち, 表面電荷層内に分布する固定電荷の密度と高分子セグメントが液体に及ぼす粘性抵抗に関連した量, つまり, 柔らかさのパラメタで特徴づけられる。このうちとくに, 柔らかさのパラメタの意味について議論する。
  • 竹川 雅実, 小川 和義, 国府田 悦男
    2008 年 8 巻 2 号 p. 47-53
    発行日: 2008/02/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    本論文は, 高分子電解質ナノゲル系における複合体形成の様相を示すことを目的とする。対象とする系は, ポリアニオン (PA) とカチオン性ナノゲル (CG) およびアニオン性ナノゲル (AG) とCGの二つで, 主として低分子塩を含まない条件下, 動的光散乱と静的光散乱を組み合わせて研究した。主要な結果は以下の通り要約される。 (i) PAはCG-・粒子と粒子内複合体を1 : 1の化学量論性に従う電荷中和によって形成するが, (ii) 結合したPAは, 高分子電解質交換反応により, CG, ポリカチオンまたはKCIの添加によって解離する。 (iii) AGを, それより電荷数の多いCGに加えると, 'randommodel'に従って複合体が形成し, CGの強い静電引力でAGがcGに均一に結合する。 (iv) これとは逆に, cGをAGに加えると, AGの一部はCGの電荷を中和するために優先的に結合し, 他の未反応AGが系中に残存する'all-or-nbnemoder'により複合体を生じる。これらは, ナノゲルがポリイオンの架橋体であり, danglingchainのためにボヤケタ界面を持つと考えることで理解できる。
  • 足立 泰久
    2008 年 8 巻 2 号 p. 55-61
    発行日: 2008/02/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    透水性の多孔質体としてフロックと高分子電解質を吸着するコロイド粒子の沈降と電気泳動を解析した。解析に当たっては透水現象の特性長である浸透長に着目した。フロックの沈降ではフロック全体を剛体とみなしたストークス抵抗が支配的であるが, 電気泳動では, 現象の特徴的スケールがデバイ長であることを反映し, フロック外部の流体が容易にフロック内部に浸透した。一方, 高分子電解質を吸着したコロイド粒子の電気泳動の場合では, 浸透長はセグメントの間の距離とほぼ同じ値に見積もられた。
  • 斉藤 拓巳, 長崎 晋也, 田中 知
    2008 年 8 巻 2 号 p. 63-69
    発行日: 2008/02/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    土壌・水環境において金属イオンの化学種分布に影響を及ぼす天然コロイドとして, 天然高分子電解質である腐植物質に着目し, その静電モデルをレビューするとともに, 蛍光消光法による電位評価との比較から, 各モデルの妥当性を検証した。腐植物質の一種であるフミン酸の負電荷が, 分子内部および外部の電気二重層中で中和されるとして, それぞれの寄与を明示的に考慮したモデルによる電位の計算値は蛍光消光実験の結果と良い一致を示した。一方, Donnan平衡を仮定したモデルでは, 実験値と比べ, フミン酸の負電位を過大評価することが分かった。これは, フミン酸分子が完全なDonnan平衡を考えるには小さいことを示唆しているといえる。
  • 森崎 久雄
    2008 年 8 巻 2 号 p. 71-76
    発行日: 2008/02/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    環境中の細菌の多くは何かものに付着して棲息している。これら細菌の付着に細胞表面の特性が強く関与している。細菌細胞の表面は通常マイナスに荷電しているが, 増殖速度が小さい菌株ほど負荷電が小さく, かつ疎水的な傾向がある。細菌の細胞表面には種々のポリマー層があり, そのため細菌は柔らかいコロイド粒子としての特徴を有する。ポリマー層の存在を考慮すると, 従来考えられてきた細胞一付着基質問のエネルギー障壁が高イオン強度条件下で熱運動エネルギーレベルに低下する場合があることが明らかになってきた。付着メカニズムの解明には, 付着力の測定も必要であり, 幾つかの実測例を示した。また, 界面を微生物の棲息場所と捉え, 微生物の生存様式 (バイオフィルム), 微生物活性に及ぼす界面の影響を紹介した。
  • 中谷 清治
    2008 年 8 巻 2 号 p. 77-82
    発行日: 2008/02/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    粒子内物質移動過程の速度論的研究は一般的に多数の粒子が存在する系で行われる。しかしながら, 粒子内物質移動過程は, 粒子サイズ, 粒子問距離などに依存するので, 定量的な解析には単一粒子ごとの計測が必要不可欠である。そこで著者らは, マイクロキャピラリーインジェクションーマニピュレーション法と顕微分光法を組み合わせた手法を開発し, 単一多孔性粒子に対する溶質の取込み・放出速度の直接観測により, 粒子内物質移動過程を研究している。本稿においては, このマイクロキャピラリー操作一顕微分光法の原理と, 単一ODSシリカゲル, シリカゲル粒子のナノ細孔内における有機分子の拡散過程について紹介する。細孔内拡散は, ボアー表面拡散, 細孔壁からの遅い脱着などの立場で議論する。
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