オレオサイエンス
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受賞論文
新しいキラルマテリアルの開発とそれを活用した質量分析法によるキラリティー検出
靜間 基博
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2008 年 8 巻 4 号 p. 159-167

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抄録
本質的にアキラルな分析法である質量分析法においても, エナンチオマー重水素標識体とその対となるエナンチオマー非標識体との等モル混合物を利用し, それらとキラルマテリアルとが会合した2つの擬似的なジアステレオメリックな錯イオンの挙動を観測することで, キラルマテリアルのキラル識別能, あるいは, 光学純度などを質量分析法のみで定量評価することができる。本総合論文では, 質量分析法によるキラリティー検出に関する方法論と, その手法に必須であるキラル識別能を有するキラルマテリアルの開発, そして, それらを利用した定量的キラリティー検出に関する研究結果を紹介する。方法論については, キラルアンモニウムイオンに対する高いキラル識別能がよく知られているキラルクラウンエーテルを用いて検証し, 溶液中の挙動と質量分析法による観測結果を比較した。その結果, 高速原子衝撃イオン化法を使用した場合は溶液中の錯形成挙動とよい一致を示したが, エレクトロスプレーイオン化 (ESI) 法の場合は一致しなかった。これはESIプロセスが濃縮を含むために会合平衡の濃度条件が変化したことによると推定された。しかしながら, ESI法で観測される錯イオンピークの挙動は同一測定条件下での再現性に優れており, 中心金属をバインディングポイントとするキラル金属錯体をホストとした場合に, 質量分析法によるキラルカルボン酸の高感度光学純度決定法に応用できることがわかった。
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© 2008 公益社団法人 日本油化学会
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