抄録
植物およびカビ・キノコなどの真菌にはグリセリド系, セラミド系およびステロール系の3系列の脂質成分が存在する。筆者は, とくにスフィンゴ脂質を取り上げ, 動物スフィンゴ脂質とは異なる構造上の特徴と物性を明らかにし, その分子種多様性と組成変動からスフィンゴ脂質と植物の低温適応との関連性を示唆した。また, 合成系と代謝関連遺伝子を検討し, スフィンゴ脂質の生理的機能について幾つかの新しい知見を得た。さらに, 動物スフィンゴ脂質と同様に, 植物や真菌由来のグルコシルセラミドにも大腸ガン予防効果などの食品機能性が期待できることを明らかにするとともに, スフィンゴ脂質を安全な機能性食品素材として活用するための技術的基盤を提示した。