2021 年 90 巻 1 号 p. 40-44
自動車などの輸送機器分野において,CO2削減と燃費向上の観点から配線材の軽量化のニーズが高まっている.我々のグループで開発したカーボンナノチューブ(CNT)‐銅複合材は,銅と比べて40%近く軽量でありながら,アルミニウム,金のような高導電性金属に近い電気伝導度を示し,銅を代替する次世代軽量配線材として有力視されている.さらに,金属よりも高いマイグレーション耐性をもち,シリコンや窒化ガリウムなど半導体材並みに熱膨張が小さいことから,パワーエレクトロニクスのような熱負荷の大きい配線・電極への応用も期待される.本稿では,CNT‐銅複合材の性能と製造プロセスを紹介し,ナノスケールの組織構造制御の重要性を提案する.