2022 年 29 巻 1 号 p. 49-53
【目的】両股関節離断症例の理学療法における座位や移乗・移動,床上動作,段差昇降,トイレ動作の獲得時期と介入方法を報告する。【症例記述】24歳の男性で,診断名は両股関節離断,合併症は創部感染である。交通事故にて受傷し,他院にて両股関節離断術を施行後,第150病日に当院へ転院となった。第154病日に理学療法を開始し,開始時より上肢筋力トレーニング,座位・移乗・移動動作練習を実施した。第175病日に移乗が自立し,第205病日に手支持なしで10秒座位保持可能となった。また,座位バランスや移乗動作が安定し,第255病日にトイレ動作や入浴動作が自立した。トイレ動作獲得は,便座座位での断端痛により難渋したが,画像所見で断端の状態を把握し,便座の内径や素材に配慮することでトイレ動作獲得につながった。床上動作・段差昇降は,第350病日より練習を開始し,第385病日に自立した。【結語】両股関節離断症例における各動作の獲得時期や理学療法介入の工夫点を示した。本報告は,理学療法の目標やプログラム立案の一助となると考える。