2026 年 32 巻 p. 337-342
河川堤防の降雨浸透現象には,表面流と浸透流の分配機構,間隙空気の影響,初期飽和度分布などの課題が残されている.従来から広く用いられているRichards式に基づく浸透流解析法は,不飽和浸透現象を表現可能である一方,強降雨時における急激な飽和度変化や浸透遅延現象の再現には課題がある.本研究では,堤体内部をタンク群でモデル化し,土木研究所の堤防大型模型における降雨量,表面流出量,堤体内飽和度の観測データを用いて水収支の考え方に基づく水理解析法を提案した.さらに他の堤防大型模型実験に対し本解析法で導入した表層浸透量Rs,浸透流移動開始貯留高hmc,間隙空気移動開始貯留高hmaを用いることで,降雨浸透に伴う堤体内の飽和度上昇や,間隙空気の影響による浸潤遅延現象を概ね再現できることを確認した.また,実堤防内の水分分布を再現できるよう,実験で得られたパラメータの値を考察し,課題を示した.