時と共に変動する偶然量の観測値の系列を時系列(time series)という.数学的にはこの系列を1つの確率過程(確率変数の族)の実現したものとみなす.確率過程の統計解析を時系列解析という.近年,時系列解析は経済,金融,生物,医学,工学等の多方面に応用されている.またその理論の発展もめざましく,通常の独立標本の理論や手法が次々に導入されてきている.時系列解析は,過去,現在,未来が互いに影響しあっていると想定される従属な標本にもとづいた統計の理論であるので,正確な分布に基づいた議論は難しい.そこで標本数を大きくしたときの理論-漸近理論-が発展してきた.本稿では時系列解析の統計的漸近理論を現代的な概念-局所漸近正規性-に基づいてレビューする.数学的に厳密な証明に興味ある読者は引用文献を参照されたい.
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