神奈川県立博物館研究報告(自然科学)
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2020 巻, 49 号
神奈川県立博物館研究報告(自然科学)
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
表紙・目次
動物学
原著論文
  • 岡本 誠, 瀬能 宏, 山崎 哲也
    2020 年 2020 巻 49 号 p. 1-6
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/31
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    本研究は、ヤセムツ科の1 種、イブシギンヤセムツEpigonus fragilis (Jordan & Jordan, 1922) の相模湾(定置網)から初めて採集された2 個体について、その記録と形態について報告した。これまで本種の日本における分布記録については、南鳥島北東方海域からしか知られておらず、本報告はそれに次ぐ記録となり、かつ沿岸域に出現した希少な知見となる。
  • 鈴木 寿之, 大迫 尚晴, 木村 清志, 渋川 浩一
    2020 年 2020 巻 49 号 p. 7-28
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/31
    研究報告書・技術報告書 フリー
    琉球列島の河川急流域に生息するハゼ科ヨシノボリ属魚類2 新種、Rhinogobius yaimaR. yonezawai を記載した。Rhinogobius yaima(ヤイマヒラヨシノボリ:新称)は縦列鱗数40–43、脊椎骨数26、第1 背鰭棘数6、頭部はよく縦偏し、体と尾柄は細長い、雄の第1 背鰭低く後端は倒しても第2 背鰭起部に達しない、腹鰭第5 軟条は普通最初に5 分岐する、胸鰭基底、腹鰭起部前方、腹部腹中線周辺は無鱗である、生時もしくは生鮮時に側頭部から第2 背鰭起部にかけての背面に橙色または赤色の2 縦線がある、胸鰭基底に1 暗色楕円形斑がある、雄の尾鰭に橙色の4 横点列がある、雌の尾鰭基底に垂直に並んだ1 対の長方形または円形の黒色斑があるなどの特徴で同属他種から区別できる。Rhinogobius yonezawai(ケンムンヒラヨシノボリ:新称)は縦列鱗数35–39、脊椎骨数26、雄の第1 背鰭は高く烏帽子形、その第2・3 棘が最長で糸状に伸長しないものの倒すと第2 背鰭第1 から第4 軟条基部に達する、腹鰭第5 軟条は最初に4 分岐する、胸鰭基底、腹鰭起部前方、腹部腹中線周辺もしくは腹部腹中線前半周辺は無鱗である、胸鰭基底に黒色楕円形斑がある、生時もしくは生鮮時に側頭部から第1 背鰭下方にかけての背面に橙色または赤色の2 縦線がある、胸鰭基底に1 暗色楕円形斑がある、雄の尾鰭に橙色または赤色の6–8 垂線がある、雌の尾鰭基底に横Y 字形の1 黒色斑があるなどの特徴で同属他種から区別できる。
  • 渡辺 恭平
    2020 年 2020 巻 49 号 p. 29-66
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/31
    研究報告書・技術報告書 フリー
    日本産トガリヒメバチ亜科の12 属について、分類学的および動物地理学的記録を報告した。12 新種、ヤマトクロトガリヒメバチAritranis kuro sp. nov.、アナアキトガリヒメバチBuathra nipponica sp. nov.、ダイダイトガリヒメバチCryptus daidaigaster sp. nov.、オオツヤトガリヒメバチGlabridorsum japonicum sp. nov.、アマノトガリヒメバチGotra elegans sp. nov.、アショロトガリヒメバチHoplocryptus ashoroensis sp. nov.、キタトガリヒメバチH. ezoensis sp. nov.、セマルトガリヒメバチH. intermedius sp. nov.、ホクリクトガリヒメバチH. japonicus sp. nov.、ハネモントガリヒメバチH. maculatus sp. nov.、イズトガリヒメバチH. toshimensis sp. nov.、ヒゲジロマルムネトガリヒメバチTrychosis breviterebratus sp. nov. を記載し、学名と標準和名を命名した。ユウヤケトガリヒメバチHylophasma luica Sheng, Li & Wang, 2019 とツシマトガリヒメバチPicardiella melanoleuca (Gravenhorst, 1829) を日本から新たに記録した。前者は属レベルでも日本新産である。チャハマキトガリヒメバチIschnus homonae (Sonan, 1930) の属を記載時の所属であるGambrus に戻し、未知であったオスも含めて再記載を行い、本州と伊豆大島、八丈島、対馬から新たに記録した。九州からのみ知られていたミノウスバトガリヒメバチAgrothereutes minousubae Nakanishi, 1965 を本州と四国から新たに記録した。キスジトガリヒメバチCaenocryptoides convergens Momoi, 1966 のオスを新たに記載した。国内では北海道からのみ知られていたダイアナトガリヒメバチCr. dianae を本州から新たに記録した。ムネアカトガリヒメバチHo. pini の色彩変異を整理し、未知であったオスと併せて再記載を行い、三宅島、四国、九州および屋久島から新たに記録した。従来奄美大島で得られたホロタイプしか知られていなかったスミヨウトガリヒメバチHoplocryptus sumiyona Uchida, 1956 の2 個体目となる個体を徳之島から発見して報告した。CaenocryptoidesCryptusGambrusGotraHoplocryptusPicardiellaTrychosis の7 属について日本産種への検索表を提供した。
  • 川島 逸郎, 渡辺 恭平
    2020 年 2020 巻 49 号 p. 67-83
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/31
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    名古屋市博物館所蔵の「吉田翁虫譜(小塩五郎写本・四巻仕立て)」(原本は、尾張藩士で「嘗百社」の幹部でもあった吉田高憲(平九郎, 号雀巣庵, 1805–1869)の作)のうち、第一巻に含まれる「蜂(はち)譜」(二十二丁)について、現代の視点から詳細な解析および同定を行った。その結果、概して写実的に描かれてはいるものの、全形図133 個体(部分図や巣、巣材、獲物などを除く)のうち、種レベルでの同定が可能なものは33 個体30 種であった。各種の生活や習性については詳しい記述がなされている一方、その配列や呼称などには規則性はみられず、西洋での系統分類のような視点は存在していない点が窺えた。描かれた種構成からは、当時の尾張から三河地方における、平野から丘陵地にかけてのハチ相や生息環境(里山)の一端も読み取れる。
  • 松本 涼子, 諏訪部 晶, 苅部 治紀
    2020 年 2020 巻 49 号 p. 85-99
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/31
    研究報告書・技術報告書 フリー
    神奈川県厚木市中荻野に位置する「あつぎこどもの森」の開園に先立ち、廃田を利用して造設されたため池、及び周辺の水系において、外来種であるアフリカツメガエル及びウシガエルが2015 年より確認されるようになった。同池はオツネントンボやヨツボシトンボなど、希少なトンボ類の定着が確認されており、在来種の保全上重要な環境である。そこで、両外来種が在来種に及ぼす直接的な影響を明らかにするため、同池で捕獲された両外来種の胃内容物の調査を行った。その結果、アフリカツメガエルは主に水生動物を捕食しており、半分以上が水生の節足動物であり、中でもヤゴの割合が高いことが明らかになった。また、神奈川県において絶滅危惧IB のホトケドジョウの捕食も確認された。一方ウシガエルは、多様な節足動物を捕食しており、その半分以上が陸生種であった。全体の割合は低いものの、捕食された水生の節足動物の中でヤゴが占める割合が最も高かった。懸念されていたオツネントンボの捕食被害は、限られた期間に捕獲された今回の個体群からは確認されなかったが、本調査地域のように人工的かつ小規模な池は、在来の生物の逃げ場が少ないことから、外来生物による捕食圧は脅威となる可能性がある。アフリカツメガエルおよび、ウシガエルの侵入は継続しているので、希少種保全のためには今後も同地域での外来種管理を継続する必要がある。
  • 鈴木 聡, 山本 冬馬, 小山 夏晴海, 広谷 浩子
    2020 年 2020 巻 49 号 p. 101-105
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/03/31
    研究報告書・技術報告書 フリー
    神奈川県周辺におけるタヌキ Nyctereutes procyonoides の体サイズの変異に疥癬が与える影響を調査した。体重には季節変異があり、冬は大きく、夏は小さい傾向が見られた。しかし、この傾向は疥癬症に罹患した個体には見られなかった。夏季には、疥癬非罹患個体の中にも罹患個体より体重の小さい個体が見られたことから、疥癬による削痩が直接的な死因になることは少ないと考えられる。一方で、冬季には疥癬罹患個体と非罹患個体の体重に差が見られた。このことから、罹患個体が冬の寒さに耐えられるだけの十分な脂肪を蓄積できていないことが、罹患個体の直接の死因と推測される。サイズを示す計測項目間の相関検定においては、全ての組み合わせで有意な相関がみられたが、いずれも相関性は弱かった。このような相関のパターンは、疥癬によってもたらされる形態的変化には影響されないと考えられた。サイズを示す計測項目間で相関が小さいことは、タヌキの形態的特徴の一つであると考えられる。
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