神奈川県立博物館研究報告(自然科学)
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2019 巻, 48 号
神奈川県立博物館研究報告(自然科学)
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
表紙・目次
地球科学
原著論文
  • 笠間 友博, 塩井 宏幸
    原稿種別: 原著論文
    専門分野: 地球科学
    2019 年 2019 巻 48 号 p. 1-12
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    研究報告書・技術報告書 フリー
    神奈川県三浦半島に分布する宮田層の大規模露頭が三浦縦貫道路の延伸工事で出現した。宮田層は谷状に侵食された不整合面と考えられる境界で重なる4 つの堆積物より構成されていた。このような侵食関係で重なる堆積物は宮田層では未確認であるが、大規模露頭が出現した多摩丘陵南部の相模層群では知られており、氷河性海水準変動によって形成されたと考えられている。宮田層と相模層群の堆積年代は重なっており、宮田層も同様の地層群である可能性が示唆される。また、出現した宮田層のうち最上位層に含まれる“船久保タフ(Fn)(塩井・笠間, 2018)”のレーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析(LA-ICP-MS)フィッション・トラック(FT)年代は0.41 Ma であった。
動物学
原著論文
  • 手良村 知功, 安田 慎, 天野 雄一, 三井 翔太, 櫻井 風汰, 平瀬 祥太朗, 瀬能 宏
    原稿種別: 原著論文
    専門分野: 動物学
    2019 年 2019 巻 48 号 p. 13-20
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    研究報告書・技術報告書 フリー
    ツマグロアオメエソ(ヒメ目アオメエソ科)およびイトヒキヒメ(ヒメ目ヒメ科)、ルソンベニテグリ(スズキ目ネズッポ科)の標本が駿河湾からそれぞれ1 個体ずつ得られた。これらはいずれも同湾における初記録であり、かつその種の分布の北限記録となる。日本近海ではこれら3 種は大陸棚の縁辺あるいは斜面上部に生息するが、南日本では黒潮流路に沿って連続的に分布することから、多くの浅海性魚類と同様に、その分散には黒潮が関係していることが示唆された。
  • 鈴木 寿之, 木村 清志, 渋川 浩一
    原稿種別: 原著論文
    専門分野: 動物学
    2019 年 2019 巻 48 号 p. 21-36
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    研究報告書・技術報告書 フリー
    止水性生活史をもつ小型の日本産ハゼ科ヨシノボリ属魚類2 新種、Rhinogobius tyoniR. telma を記載した。Rhinogobius tyoni は背鰭前方に小円鱗を被り背鰭前方鱗数8–17、胸鰭鰭条数20–23、縦列鱗数28–35、脊椎骨数26、雄の第1 背鰭は台形か半円形で第3 棘が最長で倒しても第2 背鰭始部に達しない、後眼肩甲管が通常なく前鰓蓋管が通常ある、第1 背鰭前部に黒系色斑がない、尾鰭中央部に雄では2–7 本の赤紫系色の横線があり、雌では1–7 本の同色の横線や横点列があるなどの特徴で、同属他種から区別できる。Rhinogobius telma は背鰭前方に小円鱗を被り背鰭前方鱗数3–15、脊椎骨数26、雄の第1 背鰭は台形や将棋駒形で第3 棘が最長で倒しても第2 背鰭始部に達しない、後眼肩甲管と前鰓蓋管がない、第1 背鰭前部に黒系色斑はなく中央部に青系色の1 横斑列がある、尾鰭中央部に数本のグレイ系色の横点列があることなどで、同属他種から区別できる。なお、カラー写真は本報告のweb 版(http://nh.kanagawa-museum.jp/research/bulletin/)を参照。
  • 澤井 悦郎, 瀬能 宏, 竹嶋 徹夫
    原稿種別: 原著論文
    専門分野: 動物学
    2019 年 2019 巻 48 号 p. 37-42
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    研究報告書・技術報告書 フリー
    世界最重量硬骨魚であるウシマンボウは、マンボウと混同されてきた長い歴史を持つ。神奈川県立生命の星・地球博物館で保管されていたマンボウ属魚類の標本の中にもウシマンボウが1 標本混在していたことが新たに判明した。本標本は1977 年10 月28 日に神奈川県の真鶴町沖(35˚10’N, 139˚08’E)の定置網によって漁獲され、江の島水族館を経由して、現在は剥製標本として本館で展示されている。本標本はウシマンボウにおける国内5 例目の全身標本であり、神奈川県2 例目の記録でもある。本標本の同定を困難にしていた要因は「剥製化による変形」と「舵鰭の形態異常」と示唆された。
  • 乾 直人, 山川 宇宙, 丸山 智朗, 加藤 柊也, 酒井 卓, 佐藤 武宏
    原稿種別: 原著論文
    専門分野: 動物学
    2019 年 2019 巻 48 号 p. 43-54
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    研究報告書・技術報告書 フリー
    相模湾とその周辺地域において、9 種の分布が南偏するカニ類(ハシリイワガニモドキ、ヒメヤマトオサガニ、チゴイワガニ、サメハダヒメガザミ、アミメノコギリガザミおよびノコギリガザミ属の1 種、ヒメヒライソモドキ、タイワンヒライソモドキ、トゲアシヒライソガニモドキ、オオヒライソガニ)および2 種の稀少カニ類(ムツハアリアケガニ、トリウミアカイソモドキ)が採集された。いずれの種も既往研究による本地域での記録はごく少ない。採集されたカニ類のうち、一部の南方種については越冬状況や抱卵状況から本地域における定着や分布拡大が示唆され、地球温暖化による水温上昇の影響がこうした定着や分布拡大に寄与している可能性がある。
  • ブレクモア ロバート J
    原稿種別: 原著論文
    専門分野: 動物学
    2019 年 2019 巻 48 号 p. 55-60
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    研究報告書・技術報告書 フリー
    ヤマトミミズ Amynthas japonicus (Horst, 1883) は、1820 年代収集されたシーボルトのコレクションに基づき記載された日本在来のミミズ3 種のうちの1 種である。ヤマトミミズ以外の2種は比較的よく知られていて、現在の分布もよく判っているのに対して、ヤマトミミズは初出以降、全く記録されていない。タイプ産地と考えられる長崎で採集を試みたが、ヤマトミミズを採集することはできなかった。これに加えて既存の調査結果を精査した結果、ヤマトミミズはほぼ200 年もの間にわたって記録がなく、非常に珍しい種類であるかあるいはおそらく絶滅してしまったということが示唆された。現在、ヤマトミミズはIUCN レッドリストでは「DD データ不足」(“絶滅した可能性あり”)と位置づけられているが、これは「EX 絶滅」と再位置づけするべきと考えられる。本種は、記録に基づけば、日本からの最初のミミズの絶滅種であり、無脊椎動物としても2 番目の絶滅種と考えられる。本稿では、最新の情報に基づく現在の日本のミミズの分類のチェックリストを付記した。
  • ブレクモア ロバート J.
    原稿種別: 原著論文
    専門分野: 動物学
    2019 年 2019 巻 48 号 p. 61-68
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    研究報告書・技術報告書 フリー
    フトミミズ科のミミズ Tokea orthositchon (Schmarda, 1861) は、オーストララシア在来のミミズとして最も古く記載され、現在では絶滅種として位置づけられている。本種の同定に関しては、ハンブルク動物学博物館やロンドン自然史博物館に収蔵されている資料に基づく不確実な情報によって長い間混乱していたが、ウィーン自然史博物館に所蔵されているホロタイプ標本を解剖し、詳しく観察することで問題を解決することができた。
  • 加賀 玲子, 苅部 治紀
    原稿種別: 原著論文
    専門分野: 動物学
    2019 年 2019 巻 48 号 p. 69-74
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    研究報告書・技術報告書 フリー
    ウマノオバチの生態、生活史については近年急速に解明されつつある。本種は、材中のミヤマカミキリ坑道を利用して産卵を行うために、これまで直接観察を行った事例はない。本研究では、工業用内視鏡を用いることによって、これまで未解明であった産卵行動の直接観察と、産卵時の産卵管先端部の位置を撮影することに初めて成功した。また、クリ材中で確認された寄生状態の幼虫を4 例確認でき、その一部を飼育下で継続観察を行い、幼虫、蛹化、羽化に至る経過を観察して、本種の生活史の全容をほぼ明らかにすることができた。
  • 苅部 治紀, 加賀 玲子
    原稿種別: 原著論文
    専門分野: 動物学
    2019 年 2019 巻 48 号 p. 75-80
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    研究報告書・技術報告書 フリー
    ムネアカハラビロカマキリHierodula sp. は、中国原産と考えられる外来種で、国内では最初に2010 年に福井県で確認され、神奈川県内では2015 年に記録された。本種は、在来の同属種に対して強い侵略性を有することが明らかになっている。本論文では県内で新たに確認された定着地での詳細な分布調査結果を示した。ここでは、現状では侵入初期と考えられ、在来種ハラビロカマキリと混生していた。また、市販されている中国産竹箒に付着した卵鞘の追加確認事例と、これまで報告のなかった本種の灯火への飛来例を岐阜県で観察したのであわせて報告した。
  • 渡辺 恭平
    原稿種別: 原著論文
    専門分野: 動物学
    2019 年 2019 巻 48 号 p. 81-113
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/01
    研究報告書・技術報告書 フリー
    日本産トガリヒメバチ亜科の21 属について、分類学的および動物地理学的記録を報告した。5 新種、キモンクロチビトガリヒメバチGiraudia japonica sp. nov.、ニシキトガリヒメバチIschnus splendens sp. nov.、ミヤマホソトガリヒメバチNematopodius (Nematopodius) montanus sp. nov.、アマミシマトガリヒメバチXoridesopus amamiensis sp. nov.、トカラシマトガリヒメバチX. tokarensis sp. nov. を記載し、学名と標準和名を命名した。キモンクロチビトガリヒメバチGiraudia japonica sp. nov.G. gyratoria (Thunberg, 1822) に似るが、後体節第一背板の後方が細かく明瞭な彫刻に覆われること、触角の基部方が黒色であること、後脚転節および第二転節が黒褐色であること、後体節背板がより暗色であることで区別できる。ニシキトガリヒメバチIschnus splendens sp. nov.I. bimaculatus Jonathan, 2006 に似るが、マーラースペースの長さは大腮基部幅の長さの1.0 ~ 1.1 倍であること、後脚基節は黄色紋を二つ有することから区別できる。ミヤマホソトガリヒメバチNematopodius (Nematopodius) montanus sp. nov.N. formosus Gravenhorst, 1829 に似るが、翅脈Nervellus が中央よりも前方で翅脈を分岐することと、触角が白帯を欠くことで区別できる。アマミシマトガリヒメバチXoridesopus amamiensis sp. nov.X. nigritibia Gupta & Gupta, 1983 に似るが、Epomia が弱く存在すること、後脚腿節が赤褐色であること、後体節第三背板が密に点刻されることで区別できる。トカラシマトガリヒメバチX. tokarensis sp. nov.X. schuleri (Dalla Torre, 1902) に似るが、後脚基節が一様に黒色であることと、小盾板が密に点刻されることで区別できる。ケブカトガリヒメバチApsilops scotinus (Tosquinet, 1903) とヒメホソトガリヒメバチNematopodius (Nematopodius) debilis (Ratzeburg, 1852) を新たに日本から記録し、標準和名を命名した。ミヤマクロトガリヒメバチDihelus niger Gupta & Gupta, 1978 をムカシハナバチトガリヒメバチD. hylaevorus (Momoi, 1966) の、ミイロトガリヒメバチGerdius iriomotensis Kusigemati, 1986 をサカグチキイロトガリヒメバチEurycryptus sakaguchii (Uchida, 1932) の、イシガキオオトガリヒメバチTorbda parallela Momoi, 1970 をザウテルオオトガリヒメバチT. sauteri Uchida, 1932 の、それぞれ異名とした。オオシマトガリヒメバチCryptus ohshimensis Uchida, 1930 とタカチホトガリヒメバチTorbda takachihoensis Momoi, 1966 の所属をそれぞれHedycryptusPterocryptus に移動した。上記の他、複数の種について国内新分布記録を報告した。
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