神奈川県立博物館研究報告(自然科学)
Online ISSN : 2189-6720
Print ISSN : 0453-1906
2021 巻, 50 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
表紙・目次
地球科学
原著論文
生物学(動物学)
原著論文
  • 矢頭 卓児, 手良村 知功, 江藤 曉, 瀬能 宏
    2021 年 2021 巻 50 号 p. 31-37
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/30
    研究報告書・技術報告書 フリー
    静岡県の遠州灘と駿河湾で 2 個体のバケソコホウボウが採集された。遠州灘で採集された個体は標準体長 152.8 mm の小型個体で、これまでに報告されている小型個体と同様に吻突起に骨化過剰がみられなかった。また、頭部から尾柄にかけての背面に不規則な黄色円斑が散在し、第 2 背鰭の第 2 鰭条と第 3 鰭条間の鰭膜下部と第 3 鰭条と第 4 鰭条間の鰭膜下部にそれぞれ 1 小黒色斑があるなど、色斑に特徴的なものがみられた。本種はこれまで高知県沖からのみ知られていたが、この 2 年は静岡県沖でも採集されている。本種の分布域の北上は海水温の上昇に伴うものと推測される。駿河湾は本種の北限記録である。
  • 田中 翔大, 斉藤 洪成, 瀬能 宏
    2021 年 2021 巻 50 号 p. 39-45
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/30
    研究報告書・技術報告書 フリー
    小笠原諸島父島より 3 個体(38.35–135.25 mm SL)のクチボソボラ Neomyxus leuciscus の標本が得られた。このうちの 1 個体(38.35 mm SL)は稚魚期にあり、本種の初期形態についての新知見が得られたため、その形態や体色ならびに成長に伴う形態変化の記載を行った。さらに、体長 135.25 mm の個体により、小笠原諸島父島に成熟個体が存在する可能性が示唆された。本島におけるクチボソボラの記録は限られており、今回サイズの異なる複数の標本が得られたことは、本種の生物地理学的特性 を考察するうえで重要であると考えられた。
  • 波戸岡 清峰, 瀬能 宏, 矢野 幾維, 鈴木 寿之
    2021 年 2021 巻 50 号 p. 47-53
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/30
    研究報告書・技術報告書 フリー
    八重山諸島西表島のユチン川の淡水域から Gymnothorax polyuranodon (Bleeker, 1853) と同定される本邦初記録のウツボ科魚類の一種が採集され、コクハンカワウツボという新標準和名を付し、標本の詳細な記載を行った。今回の出現は偶発的なものと思われるが、今後、保全生物学的観点から本種の動態を注視していく必要がある。
  • 渡辺 恭平
    2021 年 2021 巻 50 号 p. 55-136
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/30
    研究報告書・技術報告書 フリー
    日本産のチビトガリヒメバチ亜科の 28 属 61 種について、分類学的および動物地理学的研究をおこなった。7 日本新産属、Diaglyptidea Viereck, 1913、Micraris Townes, 1970、Surculus Townes, 1970、Bentyra Cameron, 1905、Isadelphus Förster, 1869、Megacara Townes, 1970、Tropistes Gravenhorst, 1829 を記録した。これらのうち、MicrarisSurculus は旧北区初記録でもある。17 新種、タテスジマメトガリヒメバチ Acrolyta japonica sp. nov.、リュウキュウマメトガリヒメバチ Micraris ryukyuensis sp. nov.、ホソミマメトガ リヒメバチ Surculus japonicus sp. nov.、キマダラマメトガリヒメバチ Bentyra ryukyuana sp. nov.、イシガキスジトガリヒメバチ Paraphylax elegans sp. nov.、イズミノガトガリヒメバチ Pa. politus sp. nov.、ヨコスジトガリヒメバチ Pa. transstriatus sp. nov.、ヤクシマスジトガリヒメバチ Pa. yakushimensis sp. nov.、オキナワスジトガリヒメバチ Pa. yambarensis sp. nov.、ニホンマメトガリヒメバチ Hemiteles japonicus sp. nov.、スミイロマメトガリヒメバチ H. kuro sp. nov.、ハネモンマメトガリヒメバチ H. maculipterus sp. nov.、ハラアカマメトガリヒメバチ H. yamatonis sp. nov.、オマガリチビトガリヒメバチ Isadelphus nigrus sp. nov.、サメハダチビトガリヒメバチ Lochetica japonica sp. nov.、タチチビトガリヒメバチ Tropistes shimizui sp. nov.、ウチダチビトガリヒメバチ Uchidella toichii sp. nov. を記載し、学名と標準和名を命名した。9 日本新参種、ヒゲブトマメトガリヒメバチ A. flavicoxis Sheng & Sun, 2014、キムラマメトガリヒメバチ A. rufocincta (Gravenhorst, 1829)、フサヒゲマメトガリヒメバチ Diaglyptidea conformis (Gmelin, 1790)、ヨリメマメトガリヒメバチ Bathythrix margaretae Sawoniewicz, 1980、トムソンマメトガリヒメバチ Ba. thomsoni (Kerrich, 1942)、シェンクサカゲロウトガリヒメバチ Dichrogaster nitida Sheng & Sun, 2014、オオズチビトガリヒメバチ Megacara similis Sheng, 1999、カミキリチビトガリヒメバチ Orthizema semanotae Sheng & Sun, 2014、フトヒゲハラアカオナシヒメバチ Mesoleptus laevigatus (Gravenhorst, 1829) を記録し、標準和名を命名した。イネマメトガリヒメバチ Bathythrix narangae Uchida, 1930 をクワナマメトガリヒメバチ Ba. kuwanae Viereck, 1912 の新参異名とした。ツヤアブトガリヒメバチ Ethelurgus politus Townes, 1983 をホソヒラタアブトガリヒメバチ E. episyrphicola Kusigemati, 1983 の新参異名とした。アブトガリヒメバチ Ethelurgus sodalis fuscipes Townes, 1983 をケヒラタアブトガリヒメバチ E. kumatai Kusigemati, 1983 の新参異名とし、さらにタイリクアブトガリヒメバチ E. sodalis (Taschenberg, 1865) の亜種とした。国内における新分布記録と、AcrolytaBathythrixParaphylaxEthelurgusRhembobiusAclastusHemitelesIsadelphusLocheticaGnotusUchidella の日本産種への検索表を提供した。
  • 苅部 治紀, 加賀 玲子
    2021 年 2021 巻 50 号 p. 137-141
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/30
    研究報告書・技術報告書 フリー
    キバネツノトンボは、良好な草地に生息するアミメカゲロウ目の大型の昆虫で、各地で激減している種である。神奈川県内では過去に 12 地点から記録があるが、近年の記録がごくわずかしかないことから、神奈川県レッドデータ生物調査報告書 2006 では絶滅危惧I類に選定されている。筆者らは 2017 年に本種を確認以降、県内各所で本種の現状について集中的に調査を行ってきた。その結果、県北部の相模原市緑区旧藤野町地域を中心に 20 か所で確認することができた。一方、類似の環境があっても確認できない地域がほとんどであり、その分布は局限されていた。本県における本種の現存環境は人為的な草刈りが継続されている草地で、その環境は多様であるが、産地の安定性は脆弱で、産地数は増えたものの、分布の局所性とともに、絶滅危惧度は依然高いものと判断された。
奥付・裏表紙
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