神奈川県立博物館研究報告(自然科学)
Online ISSN : 2189-6720
Print ISSN : 0453-1906
2023 巻, 52 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
表紙・目次
生物学(菌学)
報告
  • 長尾 英幸, 大西 亘, 折原 貴道
    2023 年 2023 巻 52 号 p. 1-5
    発行日: 2023/03/28
    公開日: 2023/03/28
    研究報告書・技術報告書 フリー
    2021年7月神奈川県箱根町駒ケ岳頂上付近でハコネハナヒリノキの葉に黄白化した病斑が見つかった。病斑の葉裏側は粉状物で覆われていた。これらは植物病原菌によるものと考えられ、形態学的特徴と宿主情報からこの植物病原菌はハナヒリノキ平もち病菌に近縁のもち病菌と考えられた。ITS領域による相同性検索の結果、登録されているハナヒリノキ平もち病菌が上位3位以内の相同性を示したが、本菌はもち病菌の1種だがハナヒリノキ平もち病菌とは同定できなかった。以上のことより、本病害はExobasidium属菌によるハコネハナヒリノキ平もち病(新称)とした。
生物学(動物学)
原著論文
  • 渡辺 恭平
    2023 年 2023 巻 52 号 p. 7-44
    発行日: 2023/03/28
    公開日: 2023/03/28
    研究報告書・技術報告書 フリー
    日本産のハエヒメバチ亜科Orthocentrinaeの9 属22 種について、分類学的および動物地理学的研究をおこなった。Apoclima Förster, 1869と亜属Dicolus Förster, 1869をそれぞれ日本新産属および亜属として記録した。4 新種、エゾチビハエヒメバチApoclima brevicauda sp. nov.、オナガチビハエヒメバチApo. longicauda sp. nov.、ニッポンヒラタハエヒメバチHemiphanes japonicum sp. nov.、ムナコブオナガハエヒメバチProclitus tuberculatus sp. nov.を記載し、学名と標準和名を命名した。8日本新産種、バイカルハエヒメバチAniseres baikalensis Humala, 2007、クボミヒラタハエヒメバチH. gravator Förster, 1871、オオクシアシナガハエヒメバチMegastylus (Dicolus) excubitor (Förster, 1871)、フタヒダアシナガハエヒメバチM. (Dic.) impressor Schiødte, 1838、スネボソアシナガハエヒメバチM. (Dic.) pectoralis (Förster, 1871)、キョクトウアシナガハエヒメバチM. (Megastylus) kuslitzkii Humala, 2007、モトグロオナガハエヒメバチProclitus ganicus Sheng & Sun, 2013、ミヤマオナガハエヒメバチPr. praetor (Haliday, 1838)を記録し、標準和名を命名した。これらに加えて、既知の10種、タイリクツヤハエヒメバチ(標準和名新称)Aperileptus albipalpus (Gravenhorst, 1829)、ムネヒダツヤハエヒメバチ(標準和名新称)Ape. vanus Förster, 1871、クナシリハエヒメバチ(標準和名新称)Eusterinx (Divinatrix) kurilensis Humala, 2004、ジュズヒゲハエヒメバチE. (Holomeristus) tenuicincta (Förster, 1871)、トゲスジハエヒメバチ(標準和名新称)E. (Ischyracis) bispinosa (Strobl, 1901)、ムネツヤヒラタハエヒメバチ(標準和名新称)H. erratum Humala, 2007、モモボソアシナガハエヒメバチ(標準和名新称)M. (M.) cruentator Schiødte, 1838、モモブトアシナガハエヒメバチ(標準和名新称)M. (M.) orbitator Schiødte, 1838、ハラボソハエヒメバチNeurateles asiaticus Watanabe, 2016、ツヤハラコハエヒメバチ(標準和名新称)Pantisarthrus lubricus (Förster, 1871) についても新分布記録を報告した。旧北区東部産Apoclimaと全世界産のHemiphanesの種への検索表を提供した。
  • 苅部 治紀
    2023 年 2023 巻 52 号 p. 45-49
    発行日: 2023/03/28
    公開日: 2023/03/28
    研究報告書・技術報告書 フリー
    キバネツノトンボは、現在、神奈川県内での分布が県北部の一角に極限される絶滅危惧種である。今回は、苅部・加賀(2022)で本種では初めて実施された個体識別マーキング調査を発展させ、発生シーズンのほぼ全期間にわたって調査を実施した。その結果、総計367頭にマークして追跡することができた。マーキングによる確認数は昨年のマーク数より2.1倍の個体数となり、多くの個体の発生が確認できた。今回の再捕獲率は10 %であり、昨年より上昇したが、個体群の入れ替わりが顕著であることが実証できた。発生初期にはほぼ全てがオスで、約30日後に雌雄比率が逆転し、後期に向かって急速にオスの比率が減少し、末期にはほぼメスだけになるという性比の変動を、明確にすることができた。また、今回確認できた出現期間は、60日程度であった。再確認日数の最長は、本年はオスで15日、メスで19日と昨年の結果よりは短かった。このように、個体マーキング手法により多くの生態情報が得られることが明らかになった。
  • 矢頭 卓児, 手良村 知功, 松下 亮介, 瀬能 宏
    2023 年 2023 巻 52 号 p. 51-57
    発行日: 2023/03/28
    公開日: 2023/03/28
    研究報告書・技術報告書 フリー
    宮城県の石巻市沖で1個体のハナナガソコホウボウが採集された。本標本は標準体長57.2 mmの若い個体で、頭長や第1背鰭前長を始め多くの計測形質で標準体長に対する割合が比較標本(5個体)とかなり異なるが、軟エックス線撮影の結果から本標本には脊椎骨の変形や脊柱の湾曲があり、標準体長がやや委縮していることが原因と考えられた。石巻沖は本種の北限記録である。
  • 和田 英敏, 瀬能 宏, 森下 修
    2023 年 2023 巻 52 号 p. 59-71
    発行日: 2023/03/28
    公開日: 2023/03/28
    研究報告書・技術報告書 フリー
    これまで紅海とアラビア海を含むインド洋の固有種と考えられていたベラ科タキベラ属魚類Bodianus opercularis (Guichenot, 1847) に同定される2標本(標準体長20.2–44.5 mm)が小笠原諸島から得られた。これらは本種の標本に基づく太平洋における初記録となるため、詳細な記載とともにここに報告する。本研究ではこのうちの1標本(KPM-NI 7936、標準体長45.5 mm)に基づき、本種に対して新標準和名「アカシマタキベラ」を提唱する。 本研究ではアカシマタキベラと、本種と異所的に生息する近縁種と考えられていた西太平洋固有のタキベラ属魚類であるBodianus neopercularis Gomon, 2006の分布記録を再検討した。その結果、アカシマタキベラはインド-西太平洋の広域に分布し、インド洋においては紅海およびアラビア海、ケニア、コモロ諸島、マダガスカル、マスカレン諸島西部、クリスマス島、西太平洋においては日本とマーシャル諸島に分布することが明らかになった。その一方でB. neopercularisの正確な分布記録はマーシャル諸島に限られることが明らかとなった。
報告
奥付・裏表紙
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