学級経営心理学研究
Online ISSN : 2434-9062
4 巻
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 河村 茂雄, 武蔵 由佳
    2015 年4 巻 p. 10-21
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー
    本研究は,日本の学級集団内の教育的相互作用を測定する学級集団教育的相互作用測定尺度(中学校版)および学級集団同一視測定尺度(中学校版)を作成することを目的とした。対象は,研究1は中学生923名(男子466名,女子457名,1年生282名,2年生342名,3年生299名),研究2は中学生808名(男子400名,女子408名,1年生248名,2年生388名,3年生272名)であった。学級集団教育的相互作用測定尺度を因子分析したところ,集団士気,斉一性・自治体制,愛他性,集団凝集性,P機能,M機能,集団圧の7因子が抽出され,信頼性が確認された。次に,学級集団同一視測定尺度を因子分析したところ,教師に対する同一視,友人に対する同一視,クラスに対する同一視の3因子が抽出され,信頼性が確認された。さらに学校生活意欲尺度との関連を検討した。
  • 河村 茂雄, 武蔵 由佳
    2015 年4 巻 p. 22-28
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/02/12
    ジャーナル フリー
    本研究は,教員組織の現状について探索的検討をすることが目的である。研究1では,教員組織所属意識尺度(河村・武蔵・藤原,2014)を元に,①教育実践の向上を目指して教員個々の自主的に学び続ける意欲と行動の高さ,②学校全体の教育活動に対して組織的に取り組めるような同僚性・協働性についての意識と行動の高さ,の2点について,3つの地域の学校の教員たちの実態調査および比較検討を行った。また,研究2では,管理職に聞き取り調査を行い,①②のバランスから形成される代表的な教員組織の形態を抽出した。研究1,2より,各学校の教育実践の向上には,各学校の教員組織のあり方が関連している可能性が示唆された。
  • 武蔵 由佳, 河村 茂雄
    2015 年4 巻 p. 29-37
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,小学校の学級集団の状態像を「親和的な学級」,「かたさのある学級」,「ゆるみのある学級」,「荒れ始めの学級」,「拡散した学級」,「崩壊した学級」の6つに類型化し,各類型の学級規模や学年による出現率の差異,また各類型の学級に所属している児童の学級生活意欲やソーシャルスキルの差異について、検討することであった。公立小学校73校の小学生9,665名(4年生3,126名,5年生3,285名,6年生3,254名)を対象とした。結果,学級類型と学級規模には関連がなかった。学級類型と学年による出現率との関連においては,4年生では親和的な学級が少なく,ゆるみのある学級と拡散している学級の出現数が多かった。6年生では親和的な学級が多く,ゆるみのある学級の出現数が少ないことが明らかになった。さらに学校生活意欲およびソーシャルスキルは,親和的な学級,ゆるみのある学級,荒れ始め型,かたさのある学級,拡散した学級,崩壊した学級の順に得点が高かった。したがって,学級類型により,児童の学校生活意欲やソーシャルスキルに差異が見られることが明らかになった。
  • 河村 昭博, 武蔵 由佳, 河村 茂雄
    2015 年4 巻 p. 38-45
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,児童生徒の「学校生活を満足させる」ことに寄与する「教員のユーモア」のあり方の検討を試みるために,教員のユーモアに対して児童生徒がどのような認知をするのかを測定する尺度を作成することを目的とした。対象は,公立小学校1校342名(男子181,女子161名),公立中学校1校435名(男子223,女子212名)であった。結果,小学生版,中学生版ともに,「楽しさ喚起ユーモア」「皮肉・風刺ユーモア」「元気づけユーモア」の3因子構造であることが明らかになった。下位尺度の信頼性係数は,小学生用がα=.90~.92であり,中学生用がα=.92~.95であり,尺度の信頼性が確認された。以上の結果から,小学校,中学校における教員のユーモア行動測定尺度が新たに作成された。
  • ―勇気づけと学校行事の活用を通して―
    熊谷 圭二郎, 河村 茂雄
    2015 年4 巻 p. 64-73
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/02/09
    ジャーナル フリー
    本事例は,無気力で不登校傾向を示す男子高校生に対して教育相談担当として関わり,援助を行った事例である。この男子生徒が無気力に振る舞うのは,意欲の低下という原因だけではなく,そうすることで他者との関わりによる心理的傷つきを防衛するという目的と,無気力に振る舞うことで母親からの管理・統制に抵抗し,自己決定感を得ようとする目的があることが予想された。そこで報告者は勇気づけと学校行事を活用することで,援助を行った。その結果,リレーションの形成,自分の行動の目的についての洞察と自己受容,行事への参加・貢献という流れを経てクラスへの所属感を高め,少しずつ学校生活に対する意欲を取り戻していった。このことから防衛と力の誇示を目的として無気力に振る舞う生徒に対する援助として斜めの関係を意識しながら,今できていることを指摘し,勇気づけることは有効な方法であることが示された。また,学校行事への参加・貢献は集団から「受容されている・受け入れられている」「必要とされている・役に立っている」という2つの感覚をもたらし,所属感を高めたことが示された。以上から本事例のような無気力を示す生徒に対する勇気づけと学校行事の活用は,効果的な援助方法の一つであると考える。
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