本研究の目的は,中学校の学級担任教師が学級経営に関わって,自己の行動をどのように認知しているかを明らかにするとともに,分析結果を行動の改善に活用する可能性を検討するものである。研究1では,中学校教師10名によって,中学校学級担任教師の学級への行動について,「目標追求機能に関わること」と「集団維持機能に関わること」の質問項目を作成し,中学校学級担任教師21名による予備調査を経て,50項目を選定した。この質問項目について,中学校学級担任教師116名に回答を求め,採用した112名のデータを因子分析した。その結果,最終的に26項目の質問で構成される6つの因子が見出された。さらに,作成過程や二次因子分析の結果,「規範を高める行動」「環境を整える行動」「秩序を大切にする行動」は,PM式リーダーシップ理論のP機能に該当し,「生徒に配慮する行動」「集団を育てる行動」「情報・メッセージを伝える行動」は,M機能に該当すると分析された。また,すべての因子について,学級担任経験年数5年目までの行動認知が最も低く,特に,「メッセージ」は分散分析の結果,有意に低かった。研究2では,6因子について職場風土の「協働」との分散分析を行った。その結果,学級担任教師は学級経営については,経験年数が少ない教師を除き,職場の風土に影響されずに行動しており,抱え込み,孤立を招きかねない危険性も内包していると考察された。一方で,経験年数が少ない学級担任には配慮が必要である。その際,本研究で明らかになった6つの因子の視点から,気づきを促し援助を行うことができる。
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