学級経営心理学研究
Online ISSN : 2434-9062
2 巻
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 藤村 一夫, 河村 茂雄
    2013 年2 巻 p. 1-7
    発行日: 2013年
    公開日: 2021/02/10
    ジャーナル フリー
    本研究では,個々の児童が認知する学級生活に対する満足度とそれを捉える担任教師の認知を比較することにより,教師の児童理解の実態を調査し,考察することを目的とした。調査はX県の公立小学校60学級の担任教師とその担任する学級の全児童を対象とした。その結果,侵害行為認知群の児童のずれ得点は他の群の児童におけるずれ得点より有意に大きいことが示唆された。また,正しい児童理解のためには,児童とコミュニケーションをとりながら,より客観的に内的世界を理解していく必要があることが示唆された。
  • 河村 茂雄
    2013 年2 巻 p. 22-35
    発行日: 2013年
    公開日: 2021/02/10
    ジャーナル フリー
    本研究は,教育力の高い学級集団の状態に至るまでの過程を明らかにし,教師が学級経営を展開して行く上での指針を得ることを目的とした。結果,学級集団は,I混沌・緊張期,Ⅱ小集団成立期,Ⅲ中集団成立期,Ⅳ自治的集団成立期および,Ⅲ中集団成立期以後にⅣ自治集団成立期とは認められなかった状態「全体集団成立期」という発達段階が見られることが明らかになった。各段階で特徴的な傾向が見られたが,その段階で学級集団の発達が留まった学級もあったため,次の発達段階との識別は比較的容易に観察された。それは,みんなで合意した学級集団の姿,そのために一人ひとりが守らなければならないルールの理解とそれに基づく行動が,最初は核になる一部の子どもたちに定着し,その流れに反発する子どもたちと折り合いをつけながら,それが学級の約1/3の子どもたちに,約2/3の子どもたちへと広がり,ほぼ全体に広がっていったプロセスであった。したがって,各段階で,学級集団の特徴的な状態が見られ,その段階の定着と次の段階に発展していく背景に,教師の特徴的な指導行動が認められた。
  • 鹿嶋 真弓, 田中 輝美
    2013 年2 巻 p. 36-45
    発行日: 2013年
    公開日: 2021/02/10
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,生徒の自律を支援する教師の指導態度を教師に対する半構造化面接を元に抽出し,生徒が教師の指導態度をどの程度認知しているかを測定できる尺度を作成,その因子構造,信頼性,妥当性を検討することであった。公立中学校1~3年生1068名(男子563名,女子505名)に対し,教師に対する半構造化面接を元に抽出し作成した質間紙への回答を求めた。探索的因子分析(最尤法,プロマックス回転)および確認的因子分析により,因子構造の精綴化を行った結果,「価値観育成機能」「関係性形成機能」「有能感育成機能」の3因子9項目からなる中学生に対する教師による自律支援的指導態度尺度が作成され,その信頼性・妥当性が検討された。本尺度を実施することで,教師が生徒に対して自律支援的指導態度によるはたらきかけをしているか否かではなく,生徒が教師の指導態度をどのように認知しているかを知ることができ,生徒への対応の工夫が期待される。
  • 平野 達郎
    2013 年2 巻 p. 46-59
    発行日: 2013年
    公開日: 2021/02/10
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,中学校の学級担任教師が学級経営に関わって,自己の行動をどのように認知しているかを明らかにするとともに,分析結果を行動の改善に活用する可能性を検討するものである。研究1では,中学校教師10名によって,中学校学級担任教師の学級への行動について,「目標追求機能に関わること」と「集団維持機能に関わること」の質問項目を作成し,中学校学級担任教師21名による予備調査を経て,50項目を選定した。この質問項目について,中学校学級担任教師116名に回答を求め,採用した112名のデータを因子分析した。その結果,最終的に26項目の質問で構成される6つの因子が見出された。さらに,作成過程や二次因子分析の結果,「規範を高める行動」「環境を整える行動」「秩序を大切にする行動」は,PM式リーダーシップ理論のP機能に該当し,「生徒に配慮する行動」「集団を育てる行動」「情報・メッセージを伝える行動」は,M機能に該当すると分析された。また,すべての因子について,学級担任経験年数5年目までの行動認知が最も低く,特に,「メッセージ」は分散分析の結果,有意に低かった。研究2では,6因子について職場風土の「協働」との分散分析を行った。その結果,学級担任教師は学級経営については,経験年数が少ない教師を除き,職場の風土に影響されずに行動しており,抱え込み,孤立を招きかねない危険性も内包していると考察された。一方で,経験年数が少ない学級担任には配慮が必要である。その際,本研究で明らかになった6つの因子の視点から,気づきを促し援助を行うことができる。
  • 四辻 伸吾, 水野 治久
    2013 年2 巻 p. 60-67
    発行日: 2013年
    公開日: 2021/02/10
    ジャーナル フリー
    本研究は小学校5・6年生児童を対象にして肯定メッセージの取り組みを行い,その取り組みが児童の自尊感情にどのような影響を及ぼすかを検証したものである。研究1として,教師から小学校6年生児童31名に対して肯定的なメッセージが書かれた一筆便菱がそれぞれ3回にわたって渡され,その後,児童自身による良いところ見つけの取り組みが計3回にわたって行われた。その結果,児童の自尊感情は取り組み前に比べて,教師からの肯定メッセージ及び児童自身による良いところ見つけの取り組み後に有意に高まっていた。研究2として,小学校5年生児童20名に対して,研究1の取り組み内容に,児童が教師から受け取った肯定メッセージと自分で書いた良いところについて吟味する場面を付けくわえた取り組みが実施された。その結果,研究1と同じく児童の自尊感情は取り組み前に比べて,教師からの肯定メッセージ及び児童自身による良いところ見つけの取り組み後に有意に高まっていた。
  • 根田 真江, 苅間澤 勇人
    2013 年2 巻 p. 68-73
    発行日: 2013年
    公開日: 2021/02/10
    ジャーナル フリー
    本事例は,同僚と管理職との関係に悩んでいる担任教師に対して,学年主任である報告者が援助を行った報告である。面接,観察,質間紙を用いたアセスメントにより,同僚や管理職の担任教師への学級経営に対するネガティブな評価が関係を悪化させていると考えられ,担任教師を情緒的に支援することと学級経営を具体的に支援することで,担任教師のストレスを軽減し,同僚や管理職との関係改善を目指した。面接は,担任教師の鬱積した感情を浄化し,構成的グループ・エンカウンターなどを用いた学級経営への支援は,学級集団内にルールを定着させるとともに授業態度や清掃活動を改善した。学級経営に困難を抱えている担任教師には,受容的なカウンセリングと指導スキル獲得など学級づくりに対する支援が必要であることが示唆された。
  • ―構成的グループエンカウンターを活用した援助―
    木村 佳穂, 苅間澤 勇人
    2013 年2 巻 p. 74-83
    発行日: 2013年
    公開日: 2021/02/10
    ジャーナル フリー
    本事例は,スクールカウンセラーである報告者が,高等学校新入生180名に対し,入学時のリレーション形成を目的に援助を行った事例である。生徒の適応感を高める技法として構成的グループエンカウンターを活用した。報告者はアセスメントを行い,集団の状態と目的にそったエクササイズの選定と構成を第二著者と共に行った。その結果,新入生の集団活動における緊張感は緩和され,リレーション形成が促進された結果が示された。このことから,入学時における構成的グループエンカウンターの活用は,新入生の不適応の予防として効果的であると考える。また,スクールカウンセラーの専門性は,構成的グループエンカウンターの展開を考える上で効果を示した。スクールカウンセラーは心理教育的援助サービスの専門家としてグループ・アプローチなどの集団に対応できる力も身につけておくことで,学校の幅広い援助ニーズに対応することができると考える。
  • 苅間澤 勇人
    2013 年2 巻 p. 84-91
    発行日: 2013年
    公開日: 2021/02/10
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,リストカットした女子高校生への学級担任による援助の経過を報告して,危機的な状況において援助が効果的に行われるための要因を検討することである。報告者は,リストカット後の援助の要請を受けて,生命の危機を救い,安心できる環境を用意して,理想我と現実我のギャップを小さくする援助を行った。事例に基づく考察から,1)普段から情報交流を行って教師,生徒と保護者のリレーションを形成しておくことが,危機的な状況における援助要請や援助体制の速やかな確立につながること,2)特に家族の信頼関係の再形成や心の絆を回復することが,自殺防止や自殺未遂後の援助に有効であること,3)危機的な状況においても,適切なアセスメントと援助方法を身につけておくことが教師に求められることを指摘した。また,教師による危機介入モデルの必要性を指摘した。
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