組織スラックは組織が保有している余剰資源を意味し、変化する環境に適応するためのクッションとして機能するといわれている。このクッションは、組織の様々な関係や状況に対して機能するが、そのなかでも期間業績のクッションとして、すなわち組織の業績を組織スラックによって平準化しているということが、多くの研究によって指摘されている。しかしその反面、これに関する実証研究は少なく、組織スラックによる利益平準化については、そのプロセスや方法など明らかとされていない部分が数多く残されている。たとえば、このような利益平準化行動は、組織で創出されるスラックの大きさ、すなわちスラック量によっても異なってくるであろうし、どのような項目にスラック資源が多く吸収されているのかといったことも関係するものと思われる。特に組織のスラック量は、スラックの利用方法や組織の業績に多大な影響を及ぼすものといえよう。だが、組織で創出されるスラック量に基づいた研究はこれまで存在していない。そこで本稿では、高橋(1999)で発見された組織のスラック量を表す因子と4つの異なる機能を説明する因子を用いて、組織スラックが組織の業績(利益)平準化にどのような影響を及ぼしているかについて明らかとしたい。本稿の構成は以下のようになっている。まず、2では組織スラックの分類を再検討するとともに、組織スラックによる利益平準化行動についての研究をレビューする。そして3では、組織スラックによって利益平準化がなされているかについて分析した後に、この利益平準化に、スラック量や機能を説明するスラックの違いがどのような影響を及ぼしているかについて明らかとしている。そして最後の4では分析結果についてまとめるとともに残された課題について述べている。
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