生活大学研究
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生活大学研究
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • ヒメハヤ属2種の共存河川(落合川)における中間型系統
    小林 日下ゆり, 松田 宗男, 大塚 ちか子
    2023 年 8 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/04
    ジャーナル オープンアクセス
    ヒメハヤ属の2種アブラハヤとタカハヤは、形態と分布から識別可能な別種であるが、稚魚は、形態での識別は困難である。我々は、まず飼育観察により稚魚からの成長過程を記録し、両種が識別可能となる体長を調べた。その上で、両種の生息が確認される東京都東久留米市の落合川とタカハヤ分布地域の岡山県苗代川、赤和瀬川、アブラハヤ分布地域の埼玉県横瀬川の4河川から採集したヒメハヤ属の275 個体について、外部形態とミトコンドリアDNA内のチトクロームb領域のRFLP解析を行った。その結果、落合川では、アブラハヤとタカハヤの交雑個体、および両種が生息していることがわかった。また、落合川におけるこれらの魚類の分布を調べたところ、落合川には両種が共存できる場所と両種の雑種が形成される場所がある可能性が示唆された。
  • 落合川におけるヒメハヤ属の交配種の起原と国内外来魚による生態系の変化について
    渡部 俊太郎, 松田 宗男, 大塚 ちか子
    2023 年 8 巻 1 号 p. 17-29
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/04
    ジャーナル オープンアクセス
    関東地方には、従来アブラハヤだけが生息していた。しかし我々は、東京の落合川でアブラハヤに混じって、タカハヤ様個体や両種の雑種と思われる個体が生息しており、タカハヤの侵入による遺伝子移入が起きている可能性を指摘した。本研究では、関東地方の落合川、横瀬川、成木川、タカハヤが優占種である岡山県の4河川、および両種の分布が重複しているとされている三重県と滋賀県の2河川から採集した154個体を用いて、母系遺伝のミトコンドリアチトクロームb のRFLPと外部形態を解析した。その結果、落合川のタカハヤは両種の分布が重複している地域から移入された可能性が考えられた。また、落合川以外の河川にもタカハヤが移入され、アブラハヤと交雑している可能性が示唆された。このような国内外来種の移入が複数の河川で観察されたことは、稚魚放流などによる国内外来魚の移入が、様々な河川で生態系の変化を引き起こしている可能性を示唆している。
  • マタイ24, 28/ルカ17, 37によせて
    大貫 隆
    2023 年 8 巻 1 号 p. 30-43
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/04
    ジャーナル オープンアクセス
    マタイ24, 28/ルカ17, 37に,「死体のあるところはどこでも,そこに禿鷲たちが集まるであろう」というイエスの発言がある.共観福音書の研究においては,マタイとルカ福音書に共通する語録資料(通称Q資料)の一部とみなされている.この語録は私が過去二十年来続けてきたイエスの「神の国」のイメージ・ネットワークの新たな網の目として追加的に「積分」可能である.このことを論証することが本論考の課題である.私見では,プルタルコス『倫理論集』の一篇「自然現象の原因について」918Cとルクレティウス(前99年頃?55年頃)『事物の本性について』IV, 679に,内容上も文言上も最も顕著な並行事例が見つかる.それは死肉があれば,場所の如何を問わずどこにでも集まってくる禿鷲の超能力を称える格言であった(以上第II節).福音書記者マタイとルカがQ資料に加えた編集とその神学的意味を分析(第III節)することによって,Q資料がこの格言を用いていた意味が復元できる.すなわち,すでに死から復活して今は天にいるイエスが間もなく再臨するが,その再臨が人間の居場所を問わず目に見えるものだということである.生前のイエスにとっては,同じ「人の子」という語は自己呼称ではなく,自分が宣べ伝えている「神の国」が間もなく地上に実現する時に出現するはずの超越的救済者を指していた.この違いを考慮に入れた上であれば,生前のイエス自身が問題の格言をその「人の子」の到来の普遍的な可視性を言い表すイメージとして,稲妻のイメージとワンセットで用いたことに「さもありなん」の蓋然性がある.その到来は稲妻のひらめきが地上の特定の「あそこ」や「ここ」に限定されないのとまったく同じように,地上のどこでも目に見える宇宙大の出来事だというのである(第IV節).
  • 1920~30年代の『婦人之友』を中心に
    菅原 然子
    2023 年 8 巻 1 号 p. 44-63
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/04
    ジャーナル オープンアクセス
    自由学園は1921年に女子中等教育および高等科を各種学校としてスタートし、その後27年に小学校を設立した。1935年には男子中等教育(各種学校)をスタートする。しかし、この男子中等教育の構想段階では、自由学園の創立者である羽仁もと子・吉一が、主に『婦人之友』誌上にて、当時の識者たちと広く男女共学について議論をしていることがわかった。羽仁夫妻は共にジャーナリストで、学校設立前の1903年より家庭改良から社会改革を目指して雑誌を創刊、誌上ではたびたび教育問題を取り上げ、自身が学校を設立する際も開校の告知や生徒募集は主に誌上にて行った。本論では1910年代末から1930年代にかけての、羽仁夫妻の男女共学構想と、その後の男子中等教育構想への変遷を、『婦人之友』の記事から追う。当時の日本で展開された男女共学論の動きとも重ねつつ、羽仁夫妻が男子部設立に至るまでにどのような検討を行ったのか、その過程の一部を明らかにすることを試みる。
  • 吉川 慎平, 小田 幸子, 鈴木 祐太郎
    2023 年 8 巻 1 号 p. 64-71
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/04
    ジャーナル オープンアクセス
    自由学園(以下,本学)の環境に関わる学びを支援する環境文化創造センターでは,2019年度に全校の教育・研究・マネジメントに供することを目的に,既設の気象観測機器を全面更新する形で本学南沢キャンパス(東京都東久留米市)の最高学部(大学部)エリアに,高精度の気象観測システムを導入し,「自由学園水文・気象観測システム(以下,本システム)」として2020年1月1日から運用している.観測項目は気温,相対湿度,降水量,風向,風速,気圧,日射量(2020年7月1日から)の7要素で,各センサーからの信号を10分毎に自動集計記録し,データはインターネットを介してクラウドサーバーへ送信され,随時閲覧・利用を可能な状態としている.また屋上露場の補完地点として,同キャンパス内に地上露場を設置し,2021年1月1日から運用している.なお,気象業務法第6 条・9条に基づき,参考値を除き本システムで用いているセンサーは「気象庁検定」を受けており,所管の東京管区気象台(気象庁)に「自由学園南沢キャンパス屋上露場」,「自由学園南沢キャンパス地上露場」としてそれぞれ設置届出を行っている.本稿は,学内外の教育・研究用途に供することを目的に,2021(令和3)年の「年報(No. 2)」として,2021年1月1日から12月31日まで365日間の屋上露場7要素,地上露場8要素(参考値)の観測結果概要,並びに観測の方法等について取りまとめたものである.
  • 吉川 慎平, 小田 幸子, 鈴木 祐太郎
    2023 年 8 巻 1 号 p. 72-80
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/04
    ジャーナル オープンアクセス
    自由学園では,2019年度に本学南沢キャンパス(東京都東久留米市)に,高精度の気象観測システムを導入し,「自由学園水文・気象観測システム」として2020年1月1日から運用を開始し,7要素について10分毎に気象データを蓄積している.従前はこうした連続データが得られなかったため,本学の実習・研究において気象データが必要な場合,専ら気象庁Webから5 km~10km程度離れた最近傍3地点(練馬・府中・所沢)のアメダスデータが参考値として代用(参照)され,3地点の算術平均を取るなどの方法が試みられた.しかしながら,そうした参照方法が妥当であるか詳細な検討が困難であった.現在,本学における実観測データが蓄積しつつあり,比較・検討が開始できる状態になったことから,本研究では気温・雨量に注目し評価することとした.相関分析等の結果から,アメダスデータ参照方法は概ね妥当であった.しかし,特に極値はばらつきが大きいため,参照に際しては地点ごとの傾向を十分に考慮する必要があることが分かった.同時に,こうした気象庁による地上気象観測の空白地帯において,より真値に近い値を得るには,観測要素ごとに個別の検討が必要である.今回比較検討した気温については,距離が近く同じ平野部であるなど一定の条件を満たせば,近傍地点から推定することもある程度可能であることが示唆された.一方,降水量については,距離が近く同じ平野部であっても,降水量分布の局所性から,一定の参照法を見出すことは難しいことが示唆された.以上から地上気象観測の空白地帯における気象現象をある程度推定することはできるが,それらの妥当性を評価するためには,最終的には実観測をせざるを得ない.これに鑑みると,気象庁基準に適合した気象観測システムを早晩導入し,実データで空間的に補完することが最も効率的であることが再認識された.
  • 戦時下の自由学園の農業教育から (1)
    大塚 ちか子, 下野 明子, 松田 こずえ
    2023 年 8 巻 1 号 p. 81-102
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/04
    ジャーナル オープンアクセス
    自由学園は1921年に旧東京府で女学校としての創立後,関東大震災後の復興による現 目白キャンパス周辺の都市化によって,1930年代前半に農村地帯であった旧 同 北多摩郡久留米村の現南沢キャンパスに移転し,1935年に男子部が創設された.当時は,1931年の満州事変以降,1937年日中戦争,1938年に国家総動員法公布と続く戦時体制下であった.自由学園の食糧増産は,佐々木喬教授(東京帝国大学田無農場長)の指導によって,農業教育として男子部,女子部,初等部が協力して行われた.本寄稿では「戦時下の自由学園の農業教育から(1)」として,自由学園南沢キャンパス北側の谷を流れる落合川沿いにあった「旧落合川自由学園校地(仮称)」(男子部産業教育の拠点)と,そこで行われた循環型農業を目指した麦作と水田稲作,養豚について,男子部農業助手による1943(昭和18)年の報告と,当時の生徒の回想から紹介する.
  • 向山緑地・立野川源流域 (1)
    柏木 めぐみ, 南雲 八恵, 大塚 ちか子, 下野 明子, 松田 こずえ
    2023 年 8 巻 1 号 p. 103-111
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/04
    ジャーナル オープンアクセス
    自由学園南沢キャンパス(東京都東久留米市学園町1–8–15)の構内を流れる立野川の最上流域である「向山緑地・立野川源流域」(東久留米市南沢3丁目)は,北向きの斜面林で,旧石器・縄文時代から人々に利用されながら大切に守られてきた.大きな撹乱を受けずに残されているこの貴重な縁崖林を継承していくため,自由学園の学生等は,地元に学び,地域の一員として保全活動等に取組んでいる.本寄稿では,自由学園最高学部(大学部)の学生・教員が,向山緑地・立野川源流域をフィールドとして,地域の方々と共に行っている教育研究の内容の一部を紹介する.
  • 遠藤 敏喜
    2023 年 8 巻 1 号 p. 112-117
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/04
    ジャーナル オープンアクセス
    2021年度最高学部(大学部)4年課程卒業研究は23人が、個人研究21・共同研究1の計22のテーマに取り組んだ。2年課程卒業勉強は5人が1つのテーマに取り組んだ。成果はそれぞれ論文にまとめられ、また、2022 年2 月19日(土)開催の報告会で学内外の関係者ならびに招待者にむけて発表された。今年度の報告会も昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴う措置として、ウェブ会議ツールZoomを用いたオンライン配信でなされた。学生の代表は報告会にて「卒業論文の執筆を通して、自由学園での学びを見つめ直し、自らに落とし込むことができた」と語った。
  • 神 明久
    2023 年 8 巻 1 号 p. 118-120
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/08/04
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、2022年2月25日(金)に開催された、2021年度生活経営研究実習報告会の報告内容をまとめる。
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