生活大学研究
Online ISSN : 2189-6933
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4 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 自由学園最高学部における教育プロセスの実証分析
    横原 知行
    2018 年 4 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/05
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は、リベラルアーツ教育のプロセスについて、知識経営の視点から実証的研究を通して明らかにすることである。本研究で分析対象とするのは自由学園最高学部である。本研究では知識経営の分析枠組を用いる。知識経営とは、既存の知識を共有・活用しながら、新しい知識を創造する経営の実践を考察対象とする経営学の専門領域である。本研究ではその分析枠組を最高学部における教育プロセスの分析に詳細に適用する。はじめに、リベラルアーツ教育と、大学における知識経営について先行研究を整理し、本研究のねらいを明らかにする。次に、知識経営の考え方に基づいた知識の共有・活用・創造、そして、形式知と暗黙知の相互変換について説明する。続いて、最高学部の教育プロセスについて検討する。関連する文書に依拠しながら、最高学部の教育理念とカリキュラム―「生活教育」、「基礎カリキュラム」、「専門カリキュラム」、「ライフデザイン」―について概観する。その上で、最高学部のリベラルアーツ教育の特色の一つである「テーマ別グループ研究」(ゼミ)の教育プロセスについて、観察した事例をもとに分析を行う。ゼミ生たちはどのようなプロセスによって自身の関心ある領域の学習を深め、また、どのように他者と相互作用しながら学んだ知識を共有・活用・創造しているのか、詳細に分析する。以上を踏まえて、最高学部における教育プロセスを知識経営の視点から分析する。特に、最高学部の教育プロセスは、知識の共有・活用・創造という知識プロセスを内含していること、形式知と暗黙知の相互変換が起こっていることの二点について述べる。最後に、最高学部のリベラルアーツ教育の実証分析を通して明らかになった発見事項、インプリケーション、最高学部への期待、将来研究の示唆について述べる。
  • 外務省東方文化事業との関わりを中心に
    清水 賢一郎
    2018 年 4 巻 1 号 p. 14-41
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/05
    ジャーナル フリー
    本稿は自由学園と中国との交流の歴史の、開始当初の状況について、学園を訪れた中国からの視察団の来訪記録を通じて明らかにしようとするものである。中国からの来訪者との交流の積み重ねは、1938年の北京生活学校創設へと至る経緯として、また日中戦争を軸とする東アジアの国際情勢の中で自由学園がいかなる位置を占めたのかを理解するうえでも重要な意義をもつが、その実相は従来ほとんど知られていない。こうした状況を踏まえ、本稿では事実の掘り起こしを主眼に、学園の内部広報誌、外務省の未公刊文書、及び中国側の報告書や新聞雑誌等を対象に探査を進めた結果、1924年に中国各地から相継いで視察団の来校があったこと、その背景には外務省の東方(対支)文化事業が深く関係していることが明らかになった。中国からの視察団が学園の教育実践の何に注目したのか、逆に学園の生徒は視察団との交流を通じて中国への認識をどのように深め得たのかを、両者を媒介した第三者、日華学会や中華留日基督教青年会との関係性の中で多方向的に照射させ合うことによって、自由学園を舞台に繰り広げられた歴史の一端を解明するとともに、学園という〈場〉が日中文化交流史において果たした役割とその意味を、社会・文化的側面から政治・外交的側面まで含め多面的に理解するための重要なヒントが浮かび上がってきた。学園と中国との関わりの検討は、一学園や個々人の友好交流から視点を拡げ、国際政治や文化外交、さらに交流相手の国内事情までを含む、多層的な力学の中に置き直して再検討される必要がある。国内的/国際的に複雑多様な力線の輻輳する磁場の中で、学園は一つの自立的な位置づけを有しており、そのことこそが種々の難しさを抱える文化外交の中で、訪問先として学園が選好された所以と見なされる。
  • 杉原 弘恭, 田口 玄一郎
    2018 年 4 巻 1 号 p. 42-68
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/05
    ジャーナル フリー
    フレキシブルで多目的なフレームワークとしてのケイパビリティ・アプローチの汎用性を拡張するために,ケイパビリティの概念整理を行った.その際に,ルーツとしてのネガティブ・ケイパビリティを探るとともに,センの提唱したケイパビリティの定義式を基本とし,ヌスバウムとの比較を通じ,これまでケイパビリティを論ずる際に出されたいくつかのキーとなる概念を,(1) Positive-Negative, (2) Active-Passive, (3) Explicit-Implicit (Potential) の3軸として抽出し,その組み合わせによる静学的な8象限のケイパビリティ・キューブを提示した.さらに,システム論による定義式の解釈を行って,動学的能力と構造変化能力を兼ね備えていることを示した.続いて視座としてのケイパビリティに影響を及ぼすネガティブ・ケイパビリティ,ケア(caring)を概観し,加えて教育的なつながりを確認するために,リベラル・アーツとの関係,さらにはその延長線上に位置するマネジメントとのつながりについて述べた.
  • 田口 玄一郎, 杉原 弘恭
    2018 年 4 巻 1 号 p. 69-77
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/05
    ジャーナル フリー
    小稿は,杉原・田口(2019)「ケイパビリティ・アプローチ再考」1における「ケイパビリティ(capabilities)」の重層的な心構えを内包するフレームの展開可能性を,著者らの勤務校である(学)自由学園(以下,自由学園)の“生活教育” にフォーカスし再評価するものである.まず,自由学園創立(1921年)時の創立者の教育観を確認し,続いて,同学園の大学部である最高学部(以下,学部)開学(1949年)時の教育理念を再考することとした.自由学園の創立以来の“生(いのち)のよき経営者” を目指す教育は,同学園の教育の集大成として位置づけられる学部開学以降継承されてきているものであり,特にその“生活教育” に見出されるバランスと実践について理解する上で「ケイパビリティ教育」が一つの重要な指標となることを示唆した.
  • 「共感」の功罪をめぐって
    木村 秀雄
    2018 年 4 巻 1 号 p. 78-96
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/05
    ジャーナル フリー
    自由学園における「親友を作ってはいけない」という指導はなぜ存在したのか、青年海外協力隊員の「派遣先の国が好きになれなかったらどうしよう」という不安にはどう答えるべきか、人類学の「仕事を始める前にまず調査地の人と仲良くなるべきだ」という調査論は正しいのか、この3 つの疑問を出発点に、他者に共感することの功罪について論ずる。「速い思考(システム1)」と「遅い思考(システム2)」、「手続的行為」と「宣言的行為」、「価値観に彩られた感情的行為」と「価値自由な慣習的行為」という人間の行為を2つに類型化する理論的枠組みをさまざまな観点から論じ、この枠組みを基礎にして「共感」について広い観点から論ずる。その結果、3つの疑問に対して、共感が人間の生活において大きな力を持っていることを認めつつも、それを強調しすぎることは視野をせばめ、教育・国際協力・人類学調査の目的に合致しないことがあると回答する。さらに最終的に、共感を利用しながらも、社会に対する広い視野を保ち、社会の公共性に対する考慮を失ってはならないと結論づける。
  • 安藤 寛子, 遠藤 敏喜, 河原 弘太郎, 齋藤 凜太郎, 座波 佑爾, 田中 悠貴, 奈良 忠寿, 野村 太郎, 日髙 安哲
    2018 年 4 巻 1 号 p. 97-102
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/05
    ジャーナル フリー
    “青色は世界中で好まれる色である” という主張に端を発し,ひとが思い描く青色は同じ色であるかを探った.小学生から高齢者まで幅広い年齢層にアンケート調査を実施し,得られた386人分のデータを分析した結果,ひとが思い描く青色の代表色は概ね同じであるが,青色の許容範囲は年代で差異があると結論付けた.
  • 吉川 慎平
    2018 年 4 巻 1 号 p. 103-104
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/05
    ジャーナル フリー
    In October 2018, The 17th World Lake Conference was held in Ibaraki prefecture for the first time in 23 years since 1995. In this paper, we will outline the advanced water circulation mechanism surrounding the Sakuragawa river basin and the Sakuragawa river, which is the inflowing river of Lake Kasumigaura, which is the representative lake in this area. Also, it shows an inventory of survey results related to the Sakuragawa river.
  • 二井 彬緒
    2018 年 4 巻 1 号 p. 105-107
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/05
    ジャーナル フリー
    本稿では、2018 年4 月21日に自由学園みらいかんに於いて開催された、第1回リベラルアーツ研究会について、研究会で報告された下記のふたつの報告内容について紹介する。 ・ 藤崎文音(成蹊大学大学院文学研究科日本文学専攻卒現株式会社トーハン勤務)キャリアプランニングに関する講演「自由学園一貫教育を経た進学及び就職」 ・ 二井彬緒(東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍)学術報告「〈共棲〉の地政学―パレスチナ・イスラエルにおける二民族国家論再考」
  • 小田 幸子, 神 明久
    2018 年 4 巻 1 号 p. 108-111
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/04/05
    ジャーナル フリー
    2017年度の自由学園最高学部(大学部)の4年課程卒業研究は、19本の論文が提出された(うち3本は共著)。また、2年課程卒業勉強についても論文形式のまとめが提出された。これらの成果は、2018 年3 月3日に開催された2017年度4年課程卒業研究・2年課程卒業勉強報告会にて発表された。本稿では、卒業研究及び卒業勉強の論文タイトルと報告会の様子を紹介する。あわせて、同年3 月9 日に開催された「生活経営研究実習」(1・2 年必修科目)の報告会についても紹介する。
  • 生活大学研究 編集委員会
    2019 年 4 巻 1 号 p. 112-113
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/13
    ジャーナル フリー
    研究誌『生活大学研究Vol. 4 No. 1 2019』におきまして,誤植と漏れがございましたので,以下の通り訂正させていただきます.
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