生活大学研究
Online ISSN : 2189-6933
ISSN-L : 2189-6933
7 巻, 1 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 初等部3・4年「水の学び」を中心に
    真中 昭典, 田嶋 健人, 津山 直樹
    2022 年 7 巻 1 号 p. 1-21
    発行日: 2022/05/07
    公開日: 2022/05/07
    ジャーナル フリー
    本研究は,教師と児童の関係性の中にある「教える–教えられる」という非対称な関係を問題と捉え,子どもの声を聞き,それに応じる形でカリキュラムをリデザインする「カリキュラム生成」の実現を目指した。総合的な学習の時間を主とした「探求学習」におけるカリキュラム生成のプロセスを分析し,その成果と課題を明らかにするものである。アクション・リサーチによる理論と実践の架橋・往還を目指し,教師と研究者が協働してカリキュラム生成を行った。実践では,児童の声を活かした探求学習を通して,調べ学習に必要な知識・技能を獲得することや探求テーマに関する専門的知識を獲得することだけでなく,児童の意識変容や専門的知識を超えた概念形成を目指した。これらを実現するための工夫として,具体的には,本質的な問いの設定,e-カリキュラムデザイン曼荼羅を活かしたカリキュラムリデザイン,パフォーマンス課題の設定,ルーブリックを用いた評価等を行った。抽出児童5名のパフォーマンス課題や振り返り等の記述から,実践プロセスにおける児童の意識変容や概念形成の様子が明らかとなった。また,教師と研究者との協働によるカリキュラムのリデザインを通して,児童の声を活かした探求学習を実現するカリキュラム生成が行われたことが成果としてとして挙げられる。
  • 自由学園における農場・植林事業概説 (1)
    吉川 慎平
    2022 年 7 巻 1 号 p. 22-34
    発行日: 2022/05/07
    公開日: 2022/05/07
    ジャーナル フリー
    本稿を含む2編の論考「自由学園における農場・植林事業概説(1)~(2)」では、2021年時点で80年が経過した自由学園による農場、植林活動を一貫した「事業」として捉え、その歩みと現状を、資料・証言等に基づき通史的に概説することを目的とする。(1)の本稿では、自由学園の「那須農場」に注目する。 1941年開場の自由学園那須農場は、2021年の自由学園創立100周年時点で満80年を迎えた。その草創期は第二次世界大戦下に重なり、当時の運営主体であった男子部も高等科が開設されて間もない黎明期であった。そうした時代背景の中で確立された理念・精神の基、本事業は自由学園創立者・羽仁吉一から直接の薫陶を受けた卒業生と戦後間もなくして開設された自由学園農学塾の卒業生が中核となり、60年近い長期に渡り自律的に運営された点が特徴である。更に農業生産や人間教育の場としてのみならず、農村部における自由学園の拠点的性格を併せ持ち、様々な社会活動、研究活動が構想され、展開した。本稿では、1.戦前・戦中期、2.戦後期、3.開場60周年以降の3つの時代に分けて全体像を概説する。また那須農場は自由学園最初の植林地と位置付けられ、その範囲は『自由学園植林活動80年通史―自由学園における農場・植林事業概説(2)―』に記した。なお本稿は、『自由学園100年史』第III部第5章「那須農場・自由学園農学塾 第三のキャンパス」の「増補版(100年史関連論考)」と位置付けられる。
  • 自由学園における農場・植林事業概説 (2)
    吉川 慎平
    2022 年 7 巻 1 号 p. 35-44
    発行日: 2022/05/07
    公開日: 2022/05/07
    ジャーナル フリー
    本稿を含む2編の論考「自由学園における農場・植林事業概説(1)~(2)」では、2021年時点で80年が経過した自由学園における農場、植林活動を一貫した「事業」として捉え、その歩みと現状を、資料・証言等に基づき通史的に概説することを目的とする。(2)の本稿では、自由学園の「植林活動」に注目する。 自由学園創立者・羽仁吉一による男子部創設の構想では、その教育環境として南沢キャンパス(東京都東久留米市)を本拠地としつつも工場、農場、そして山林(植林)が挙げられた。工場は南沢キャンパスで、農場と植林は那須で実現した中、今日に続く山林での本式の植林活動は、戦後に開始。荒廃した国土の保全という時代の要請もあり、男子部卒業生の教員らを中心に実行段階へと移され、その活動場所を広く求めていった。各地域の協力者の支援のもと、学園教育に対する地元自治体・関係機関の深い理解により、公有林・国有林を分収育林契約によって借り受けた、特例的ともいえる「学校林」の形が実現した。またその活動は海外や地域活動へと発展した。本稿では、1. 植林活動のはじまり、2. 戦後の社会背景と学園の動き、3. 各植林地の概要と展開、4. 植林活動の現状の4つに分けて全体像を概説する。自由学園最初の植林地である那須農場については、『自由学園那須農場80年通史―自由学園における農場・植林事業概説( 1)―』に記した。なお本稿は、『自由学園100年史』第III部第6章「植林活動 地域と共につくるキャンパス」の「増補版(100 年史関連論考)」と位置付けられる。
  • デンマーク留学と国際理解
    早野 曜子
    2022 年 7 巻 1 号 p. 45-62
    発行日: 2022/05/07
    公開日: 2022/05/07
    ジャーナル フリー
    2021年に創立100年を迎えた自由学園は、デンマークにあるオレロップ体育アカデミー(旧オレロップ国民高等体操学校)と1931年以来90年に亘り学校間交流を続いている。交流史その1では交流が今日まで途切れず続く要因についてデンマークのフォルケホイスコーレ(国民高等学校)として創立されたオレロップ体育アカデミー(以後オレロップ)と自由学園の共通点を考察した。本稿では日本における海外留学の変遷とオレロップへの留学の効果について留学生へのアンケートとインタビューから検証し、時代背景と留学目的から留学を3 期に分け考察した。
  • 小田 幸子, 久崎 恵那, 藤田 明日香
    2022 年 7 巻 1 号 p. 63-81
    発行日: 2022/05/07
    公開日: 2022/05/07
    ジャーナル フリー
    2020年は戦後75年にあたり,戦争を直接知らない世代への戦争体験の継承が課題になっている.本稿は,2020年度自由学園最高学部卒業勉強論文1(自由学園女子部26回生が学徒勤労動員時から戦後にかけて書いた「自由学園勤労報国隊日記(1944 年8 月~1946 年2月)」を当時の教育政策などにも照らし合わせて読解,学内外の学徒動員関連の資料・文献調査,関係者へのインタビュー調査を通してこの「日記」の持つ価値を考察,今後の自由学園の平和学習に資する参考資料の作成と学習プログラムの提案を行った)を改稿し,「自由学園勤労報国隊日記」から読み取れた女子部26 回生を中心とした自由学園の学徒動員の実態を述べ,併せて資料としての価値を明らかにするものである.なお,自由学園女子部の学徒勤労動員に関する資料として学外に発表されたものとしては,女子部22,23 回生が中島飛行機武蔵製作所に動員された当時の様子をまとめたものなどがある.
  • 教科横断型実践の事例検討を通して
    高野 慎太郎, 津山 直樹, 成田 喜一郎, 上條 由貴
    2022 年 7 巻 1 号 p. 82-101
    発行日: 2022/05/07
    公開日: 2022/05/07
    ジャーナル フリー
    本研究では、アクティブ・ラーニングの再検討に向けて、人間史学習を中核とした教科横断型実践のカリキュラムの創発過程について、学習指導案や授業資料などのドキュメントデータから明らかにした。これによって、授業方法論の開発者が現場の実践から影響を受け、方法論の問い直しや定義の更新を生じ、それが再び現場の実践にフィードバックされる過程を確認することができた。加えて、創発された教科横断型実践の実態についても、これまでになされてきた教科横断型実践との差異を明記しながら、可能な限りのドキュメントデータの提示とその詳述を行った。これによって、実践者同士が「観」を語り合い、ボトムアップで共通の学習テーマを設定し、「社会不安」という教科間の接点を見出しながらカリキュラム創発がなされている点が明らかとなった。こうした記述を通した全体からは、実践研究の水準においては、実践者と方法論の開発者における相互作用的なカリキュラム創発の過程が示され、また、授業実践の水準においては、アクティブ・ラーニングの諸課題を克服する実践の方向性が示されている。
  • 雨水排水管工事に伴う竪穴住居跡の発見
    奈良 忠寿
    2022 年 7 巻 1 号 p. 102-107
    発行日: 2022/05/07
    公開日: 2022/05/07
    ジャーナル フリー
    2007年度から、自由学園キャンパス内のインターロッキング舗装整備が進められ、それに伴う雨水排水管工事が行われた。その工事中に発見された縄文時代中期竪穴住居跡の報告を行う。工事中の発見であり、範囲や期間が限られた調査となったが、周囲に竪穴住居跡が密集している状況が確認され、縄文時代集落の全容解明へ貴重な資料が追加された。
  • 吉川 慎平, 小田 幸子
    2022 年 7 巻 1 号 p. 108-112
    発行日: 2022/05/07
    公開日: 2022/05/07
    ジャーナル フリー
    自由学園(以下,本学)の環境に関わる学びを支援する環境文化創造センターでは,2019年度に全校の教育・研究・マネジメントに供することを目的に,既設の気象観測機器を全面更新する形で本学南沢キャンパス(東京都東久留米市)の最高学部(大学部)エリアに,高精度の気象観測システムを導入し,「自由学園水文・気象観測システム(以下,本システム)」として2020年1月1日から運用している.観測項目は気温,相対湿度,降水量,風向,風速,気圧,日射量(2020年7月1日から)の7要素で,各センサーからの信号を10分毎に自動集計記録し,データはインターネットを介してクラウドサーバーへ送信され,随時閲覧・利用が可能な状態としている.また気象業務法第6 条・9条に基づき,参考値を除き本システムで用いているセンサーは「気象庁検定」を受けており,所管の東京管区気象台(気象庁)に「自由学園南沢キャンパス屋上露場」として設置届出を行っている.また屋上露場の補完地点として,同キャンパス内に地上露場を設置し,2021年1月1日から運用している.本稿は,学内外の教育・研究用途に供することを目的に,2020(令和2)年の「年報(No. 1・創刊号)」として,2020 年1月1日から12月31日まで366日間の屋上露場7要素の観測結果概要,並びに観測の方法等について取りまとめたものである.
  • 台風下の洪水流に「浮流標識」5000枚を散布した「紙まき隊」の活躍と成果
    酒井 祥次
    2022 年 7 巻 1 号 p. 113-122
    発行日: 2022/05/07
    公開日: 2022/05/07
    ジャーナル フリー
    自由学園男子部では、産業の勉強に、ニジマスの養殖があり、そのニジマスが斃死し、決算が赤字になったという学業報告を聞き、徳山工業高等専門学校の大成博文教授が考案した、マイクロバブルという装置が、ホタテやカキの養殖に効果があるという論文1を読んで、その実験に立ち会った私は、陸上水槽用の装置を、男子部の池に導入して頂きたい旨の要請を行った。 2001年頃、大成教授が来校され、生徒と共にマイクロバブル装置を、その池に設置・完了後、男子部食堂でご挨拶され、『木下博士は日本の土木工学に航空機撮影の道を拓いた第一人者で、とても尊敬している研究者です。』と話され、木下良作博士(男子部3回生・工学博士)の論文に、関心を持つに至った。2019年、最高学部4年生が卒業研究を日本土木学会で発表し、自由学園として土木学会での発表が44年振りの快挙となり、それを機に、木下論文を紐解き、台風下で、日本で初めて、洪水流の航空機写真測量を行ったことが判明した。そこで私は、それを詳らかにしたいと思い、関係機関に、木下論文を送り、情報を依頼した結果、多数の良い情報が集まったため、この論文の、サビ川防災研究から航空機撮影に至る「はじめに」の要旨を巻頭に掲げ、次に、集まった情報を載せて理解を深め、下に説明を付記する形で、まとめたものである。
  • 映画『タネは誰のもの』への教育現場からの応答
    高野 慎太郎
    2022 年 7 巻 1 号 p. 123-138
    発行日: 2022/05/07
    公開日: 2022/05/07
    ジャーナル フリー
    ESD:Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育やSDGs:Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標の大流行を背景とした環境教育の実践が盛り上がりをみせる一方で、人々の環境意識が軒並み低下しているのはなぜか。本稿は、これまでの環境教育が見てこなかった指標を参照しながら人々の環境意識の実態を捉えたうえで、授業の時空のみに留まろうとする環境教育を排し、生活や生き方といったキャリアの時空まで教育意図が貫徹するための方法論として「グリーンガイダンス」の概念セット(理論・機能)と実践例を提案するものである。なお本稿は、映画『タネは誰のもの』(原村政樹監督、2020 年公開、きろくびと配給)DVDパンフレットによせた文章に加筆したものである。
  • 遠藤 敏喜
    2022 年 7 巻 1 号 p. 139-143
    発行日: 2022/05/07
    公開日: 2022/05/07
    ジャーナル フリー
    2020年度最高学部(大学部)4年課程卒業研究は21人が,個人研究15・共同研究2の計17のテーマに取り組んだ.2年課程卒業勉強は2人が1つのテーマに取り組んだ.成果はそれぞれ論文にまとめられ,また,2021年2月20 日(土)開催の報告会で学内外の関係者ならびに招待者にむけて発表された.今年度の報告会は,新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴う措置として,ウェブ会議ツールZoom を用いたオンライン配信でなされた.学生の代表は,多くの方々の支援で研究を全うできたと謝意を表し,報告会が今後さらに素晴らしいものになるよう祈念した.
  • 神 明久
    2022 年 7 巻 1 号 p. 144-145
    発行日: 2022/05/07
    公開日: 2022/05/07
    ジャーナル フリー
    本稿は2021年2月26日(金)に開催された2020年度生活経営研究実習報告会の報告内容をまとめたものである.生活経営研究実習は自由学園最高学部(大学部)1,2年生の必修科目であり,学生は7つのグループに分かれ,キャンパスとその周辺を学びの現場として実習を中心に活動する.研究実習のねらいやカリキュラム全体の中での位置づけなどについては(小田・神2019) を参照されたい.
  • 砂子 宗次朗, マーレ― 志雄, 松島 耕太
    2022 年 7 巻 1 号 p. 146-147
    発行日: 2022/05/07
    公開日: 2022/05/07
    ジャーナル フリー
    本稿では、2021年2月10日にZoomによるオンラインにおいて開催された、第3回リベラルアーツ研究会の概要を紹介した後、報告された下記の二つの報告内容について紹介する。 ・ 進学後のキャリアに関する報告:マーレ―志雄(男子部71回生)「スポーツ業界において進学がどのようにその仕事と繋がるのか」 ・ 学術報告:砂子宗次朗(男子部68 回生)「ヒマラヤ地域における近年の氷河変動」
feedback
Top