本稿の目的は,非流暢性失語症,流暢性失語症,認知症,特異的言語障害(SLI),自閉傾向,知的障害など,さまざまな言語障害あるいはコミュニケーション障害の発話サンプルを対象とした言語学的な分析方法を提案し,それに基づいて試作した評価法を紹介することである.コミュニケーションにおいて,話し手は言語の機能を駆使することで,情報を伝える.従って,言語機能を反映する言語形式を分類することにより,話し手のコミュニケーション能力を評価する手がかりが得られると論者は仮定する.このような機能主義的分析の方法論に従って試作した記述・評価表の構成および評価内容を解説する.言語機能のうち,叙述,表出,働きかけの3つの機能を発話の記述・評価のために選び,それぞれの機能を反映する言語形式を示す.研究がなお萌芽的な段階にあることから,評価表の試作過程に重点をおいて報告することにする.
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