コミュニケーション障害学
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22 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 初年度1年間の活動と課題
    河野 俊寛
    2005 年22 巻2 号 p. 67-72
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2009/11/19
    ジャーナル フリー
    AAC手段を使っている発達障害児をもつ母親が作ったセルフヘルプグループ(SHG)について,(1)グループの概要,(2)結成の経緯,(3)初年度の活動内容,(4)会員へのアンケート調査の結果と対応,および(5)課題について報告した.言語聴覚士(ST)と協同したSHGでのAAC支援の有効性が示唆された.課題としては,(1)STという観点からは,STの専門性を発揮する体制をどう作っていくのか,(2)SHGという観点からは,(1)(1)の専門性発揮の問題と相反するが,STという専門家として,SHGという組織とどのような関係をとればよいのか,(2)AACの環境整備を,子どもの代弁者組織として学校等へどのように訴えていけばよいのか,というものであった.2年目の活動からは,会での活動を分析するコミュニケーション評価方法の開発の問題が新たに浮かび上がってきた.
  • 前新 直志, 山崎 和子, 小林 宏明
    2005 年22 巻2 号 p. 73-82
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2009/11/19
    ジャーナル フリー
    本研究では,吃音を主訴とした幼児1例(2歳11ヵ月)の非流暢性発話に対する評価を行った.調査1として2年間かけて吃音と正常非流暢性の鑑別を行い,調査2は調査1で検討した幼児の非流暢性発話に対する母親196名の聴覚判定を行った.本児の非流暢性発話について,その症状特徴や頻度の観点から検討した結果,吃音ではなく正常非流暢性と判断された.また,その正常非流暢性発話に対して違和感を感じた母親(69.4%)は有意に多かったが,吃音と判定した母親(39.8%)は有意に少なかった.しかし,違和感を感じた母親136名のうち,吃音と判定する母親(57.4%)が有意に多いことが示された.違和感および吃音と判定してしまう条件として,音や音節あるいは単語の「繰り返し」症状が考えられた.
  • 飯高 京子
    2005 年22 巻2 号 p. 83-84
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2009/11/19
    ジャーナル フリー
  • 福井 直樹
    2005 年22 巻2 号 p. 85-92
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2009/11/19
    ジャーナル フリー
    現代言語学の基本目標を説明するとともに,20世紀における言語理論の進展を概説した.Saussureが「社会的所産」とみなした言語構造を人間の脳内に実在する機能(再帰的生成システム)ととらえ,それに関する明示的説明理論の構築を目指したのが生成文法理論であるが,「より深い説明」を目指す継続的試みが現在に至る理論的変遷の根本的原動力になっていることを論じた.その上で,言語学と言語障害学が将来さらに有機的に連携するためには,言語脳科学ともいうべき分野の確立が必須であるとともに,今までの生成文法理論には欠如していた「言語の社会性」を厳密に研究するためのモデル構築が望まれるということも指摘した.
  • 峰岸 真琴
    2005 年22 巻2 号 p. 93-99
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2009/11/19
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,非流暢性失語症,流暢性失語症,認知症,特異的言語障害(SLI),自閉傾向,知的障害など,さまざまな言語障害あるいはコミュニケーション障害の発話サンプルを対象とした言語学的な分析方法を提案し,それに基づいて試作した評価法を紹介することである.コミュニケーションにおいて,話し手は言語の機能を駆使することで,情報を伝える.従って,言語機能を反映する言語形式を分類することにより,話し手のコミュニケーション能力を評価する手がかりが得られると論者は仮定する.このような機能主義的分析の方法論に従って試作した記述・評価表の構成および評価内容を解説する.言語機能のうち,叙述,表出,働きかけの3つの機能を発話の記述・評価のために選び,それぞれの機能を反映する言語形式を示す.研究がなお萌芽的な段階にあることから,評価表の試作過程に重点をおいて報告することにする.
  • 吉田 敬, 長塚 紀子, 荻野 恵
    2005 年22 巻2 号 p. 100-108
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2009/11/19
    ジャーナル フリー
    本稿では,成人の脳損傷者の談話・会話データの発話分析について考察した.分析対象,データの量,データの種類,分析方法といった発話分析に際して考慮すべき観点を述べた後,先行研究を概観した.さらに,形態統語論的な観点と談話分析的な観点から,流暢性失語症者と認知症者の発話の分析を試みた.流暢性失語症者の発話では助詞の誤用のような形態統語論的な誤りが目立った.認知症者の発話では形態統語論的な誤りはみられず,脱文脈の命題が用いられるなど談話レベルでの不適切さがみられた.最後に,対象者,分析目的,データ収集・分析に要する時間などを考慮し,適切な分析方法を採ることの重要性について強調した.
  • 土橋 三枝子
    2005 年22 巻2 号 p. 109-115
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2009/11/19
    ジャーナル フリー
    失語症者の文発話障害に関する研究や評価のために用いられる発話分析について,その臨床適用と方法を先行研究と発話分析実施例から考察した.発話サンプルはSLTA「まんがの説明」を題材とし,文発話障害を呈する非流暢失語4例(右利き2例,非右利き2例)から採取した.そして,それらの結果の比較から,発話分析は言語現象における症状の特徴を実証することや相対的評価に有効であるが,発現機序の解明には他のデータも加えた総合的評価が必要であることを示した.最後に,発話分析方法の妥当性と信頼性に関する今後の課題を提起した.
  • 崎原 秀樹, 大和田 千代子, 飯高 京子
    2005 年22 巻2 号 p. 116-126
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2009/11/19
    ジャーナル フリー
    本調査では,まず就学前後児に対して,母親が乳児にご飯を食べさせている図版(国立国語研究所,1977)を提示して叙述させる課題を実施した(研究I).小学校1年2学期開始前後になると,ことばだけで図版内容を適切に表現する2次的ことば(岡本,1985)の使用者が増加した.1問目の叙述で3要素(母親,乳児,ご飯)の関係を表現するのに必要な3項動詞未使用の者でも「母親」という主題を提示すると,3項動詞使用が促されるのが示唆された.次に知的障害児3例の叙述を縦断的に追跡し(研究II),彼らのコミュニケーションや言語発達上の問題について討論した.最後に今回採用した峰岸(2004a,2004b)のコミュニケーション障害の記述・評価のための基本的な考え方およびその項目は,1)やりとりを通じた叙述に対する定量的な分析,2)それらをふまえた評価法の開発に向けた発達論的検討を行う上で,有効な指標になることが示唆された.
  • Lise MENN, 田中 裕美子, 荻野 恵
    2005 年22 巻2 号 p. 127-138
    発行日: 2005/08/31
    公開日: 2009/11/19
    ジャーナル フリー
    言語障害をもつ人々の言語産生能力を,ナラティブで評価するのは難しい.しかし,ナラティブ能力の測定法は,言語障害が一次的なものか認知障害と合併しているものかにかかわらず,また発達性(SLI,精神遅滞,自閉症)であっても,後天性(流暢・非流暢性失語,認知症,脳外傷等)であっても,コミュニケーション能力の全体像を把握する過程において欠かせないものである.今回の発話サンプルには,語彙や統語能力の問題を含む幅広い言語の問題がみられる.また,いくつかの物語の内容を混ぜ合わせたり,必要な情報を提供しようとしないなど,認知/情動障害から二次的に生じていると思われる問題もみられる.現在使われている一面的な測定法は,このような問題を把握するためには十分でない.それぞれの言語において,研究者は信頼性・安定性・感度・妥当性のある多面的な測定法を開発することが必要である.
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