コミュニケーション障害学
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24 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 藤澤 和子, 清田 公保, 梶原 尚子, 吉村 吟子
    2007 年24 巻2 号 p. 79-87
    発行日: 2007/08/30
    公開日: 2011/04/13
    ジャーナル フリー
    文字が十分に使用できない知的障害者間でメールの交換を可能にするために,視覚シンボルを使ったメールシステムを開発し,彼らの学習結果を通してシステムの有効性を検証した.システムには,送受信の理解とシンボルを用いたメール文の作成を援助する機能を設けた.手続きとして,顔写真を表示する送受信者の選択インタフェースやメール作成画面の機能,複数のシンボル群から必要なシンボルを検索できる機能,助詞や文字の挿入機能などを開発した.知的障害のある生徒6名を対象に,メール交換の学習を行った結果,4名が送信相手にメッセージ性をもつメールを送信した.その内の3名が受信メールに対応する返信メールを送り,送受信の理解を援助するシステムの有効性が示された.しかし,2名は文型が未完成な受信メールの理解に援助を必要とし,シンボルでメール文を作成するための構文能力の不十分性を援助するシステム開発の必要性が考察された.
  • 宮田 Susanne, 大伴 潔, 西澤 弘行
    2007 年24 巻2 号 p. 88-100
    発行日: 2007/08/30
    公開日: 2011/04/13
    ジャーナル フリー
    This article discusses tests using the Developmental Sentence Score for Japanese (DSSJ), a new language measure of grammar development. Twenty language samples from three children with mental retardation (MR); three children with pervasive developmental disorders (PDD) with a development age between 2; 6 and 4; 3, and five typically developing children between 2; 0 and 3; 6. DSSJ scores were compared to the (developmental) age, as well as to the Mean Length of Utterance in Morphemes (MLUm). The correlations between DSSJ and MLUm were highly significant for both groups, while the correlations between the two measures and (developmental) age proved significant only for the typically developing children. PDD and MR children did not differ in terms of MLUm and DSSJ results. The typically developing children, however, showed a greater diversity after DSSJ 300, which points to the necessity of an extension of DSSJ items for the higher age range. The overall results suggest that DSSJ is a valuable measure of language development. The somewhat weaker correlation between the linguistic measures and developmental age shows that language development is not fully congruent with mental development. Developmental age alone then is not a sufficient predictor in the case of non-typical language development.
  • 長谷川 和子
    2007 年24 巻2 号 p. 101
    発行日: 2007/08/30
    公開日: 2011/04/13
    ジャーナル フリー
  • 高見 葉津
    2007 年24 巻2 号 p. 102-110
    発行日: 2007/08/30
    公開日: 2011/04/13
    ジャーナル フリー
    わが国における食べることが困難な障害児への言語聴覚士(以下STと略す)の関わりについて歴史的経過を概説し,STが実践する支援についての考え方や方法について知見を述べた.支援を実践する際に大切なことは,まずは対象児の主たる基礎疾患によって発達上にみられる障害の特性を理解することである.そして出現する食べることに関する多様な困難性を子どもの全体像を理解した上で分析し,子どものライフサイクルを見据えながら養育者や家庭状況を考慮して,各ライフステージに必要な支援を実践する.子どもへのアプローチは,摂食・嚥下に関する感覚運動の正常発達を参考にしながら,子どもにみられる問題に対して仮説を立て,治療的アプローチを行い,そのアプローチの妥当性を検証しながら進める.そこには,STの独創性や工夫がなされることが望まれる.特にSTとしては,食べることはコミュニケーションや認知の発達に関連することにも注目していく必要がある.
  • 野沢 由紀子
    2007 年24 巻2 号 p. 111-118
    発行日: 2007/08/30
    公開日: 2011/04/13
    ジャーナル フリー
    障害の重い乳幼児においては,多岐にわたる機関や職種が摂食・嚥下アプローチを行う場合が多く,チームアプローチは不可欠である.今回,摂食・嚥下障害を有する重度障害乳幼児の家族に対して,摂食・嚥下障害に関わる機関や職種の連携状況について実態を把握するためにアンケート調査を行い,(1)約半数が複数の機関や職種による関わりを受けており,職種も多岐にわたる,(2)複数の機関や職種が関わることには肯定的であるが,その連携については不十分と感じているといった実態が明らかになった.また,通園施設と小児リハビリテーション専門機関の双方で関わった事例,および経管栄養に対する家族の葛藤の大きかった事例の経過についてふりかえり,明確な目的をもって他職種を巻き込みながらチームをコーディネートしていくこと,専門職としての主体性をもちながら家族の気持ちを代弁していくことが,言語聴覚士の重要な責務であると示唆された.
  • 山川 眞千子
    2007 年24 巻2 号 p. 119-128
    発行日: 2007/08/30
    公開日: 2011/04/13
    ジャーナル フリー
    脳性麻痺児が有する脳損傷は,経年的にその範囲は変わらないが機能障害は拡大の一途をたどる.学齢期は身体の成長が著しいため,骨関節の変形・拘縮や運動機能の退行,呼吸障害,摂食・嚥下障害などの二次障害が出現しやすい.この時期の摂食・嚥下障害の特性について機能低下を中心に論説した.機能低下の要因として,身体的成長を背景とする摂食・嚥下器官の協調運動の困難さの増大,頸部の筋緊張の亢進や低下,口腔・咽頭部における感覚低下や形状の異常性の増大,呼吸運動の異常性の増大,胃・食道逆流現象の出現が考えられる.また学齢期でのSTの関与の乏しさが機能低下の気づきと対応を遅れさせており,脳性麻痺児の発達特性として摂食・嚥下機能の低下を十分に認識し,適切な時期に適切な支援ができることが求められる.他の医療スタッフとの連携,家族や教育機関とのネットワーク作りの重要性についても解説した.
  • 高倉 めぐみ
    2007 年24 巻2 号 p. 129-137
    発行日: 2007/08/30
    公開日: 2011/04/13
    ジャーナル フリー
    本論文では,食事に困難を抱える知的障害児に対して,0歳~6歳までの通園施設で実施している支援から得られた若干の知見について報告した.当園では,全体的な発達と大いに関係している彼らの食事の問題を「食事療育」と称してアプローチしている.食事の評価や指導をするために必要な知的障害児が食べる能力を獲得するための要因,そして,主に,ダウン症児と自閉症児に焦点をあて,食事の特徴と観察ポイントについて述べている.また,知的障害児の食事の対応として,以下の視点から述べた.(1)姿勢,(2)口周辺と口腔の感覚,(3)摂食機能を育てる食形態の調整,(4)自分で食べる,(5)食物内容の拡がり,(6)健康管理.食事療育において,主に,自己達成感を育てることと,誤学習を回避することが,彼らの発達支援や家族支援を行っていくために大切であると考えている.
  • 椎名 英貴
    2007 年24 巻2 号 p. 138-145
    発行日: 2007/08/30
    公開日: 2011/04/13
    ジャーナル フリー
    本論文では脳性麻痺による嚥下障害を脳卒中による嚥下障害と比較し,臨床特徴,治療的介入方法を論じる.両者は上位運動ニューロン損傷として共通した徴候を示す.しかし脳性麻痺の嚥下障害は次の3つの点で成人の嚥下障害と異なる.(1)原因となる神経損傷は多岐にわたり主に4つの下位グループに分けられる.(2)症状は神経学的な損傷と異常発達の相互作用により形成される.姿勢パターン,口腔領域の反射や感覚の障害は複雑で重篤である.(3)呼吸器系,消化器系の合併症が多い.治療的介入は,子どもに特有の発達的な,また環境的な要因に配慮し計画されねばならない.重要な点は以下の通りである.(1)チームアプローチの重要性,特に小児科医との連携.(2)発達的な要因を考慮に入れ,介入の目標,方法を長期的な視野から決定すること.(3)異常性に対しての適切な治療.(4)口頭指示に従えないため,徒手的な操作,用具,食材により目的の運動を誘導すること.
  • 北野 市子
    2007 年24 巻2 号 p. 146-152
    発行日: 2007/08/30
    公開日: 2011/04/13
    ジャーナル フリー
    言語聴覚士の職能において,話すことの障害と食べることの障害に対する専門的アプローチを行うことが,その中核をなしている.しかし,これらの障害の背景には必ずしも生理学的機能障害ばかりでなく,心理的問題や周囲との関係性の問題が潜んでいることが少なくない.後者へのアプローチについては自然科学的なエビデンスを確立することが難しいが,臨床心理学的な視座をもってクライエントと接すると,問題を理解しやすい場合がある.本論の目的は事例を通して,こうした視座を紹介するものである.
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