日本健康開発雑誌
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39 巻
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原著論文
  • 早坂 信哉, 後藤 康彰, 栗原 茂夫
    2018 年 39 巻 p. 1-5
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/10/26
    ジャーナル フリー

    背景・目的 入浴は身体に対する利点も多いが、入浴後の皮膚乾燥が指摘されていた。本研究は、保湿化粧品の無塗布状態で入浴前後における角層水分量の変化を観察し、さらにこの保湿化粧品を塗布することによる入浴時の皮膚の保湿効果を明らかにすることを目的とした。

    方法 同一被験者内ランダム化比較試験を行った。20-49歳の女性14名に40℃の湯に7分間全身浴をさせ、左右の前腕に無作為で一方に保湿化粧品を塗布しさらに3分入浴させた。浴後1分~60分までの間、経時的に両側の前腕の角層水分量を測定し、無塗布の対照側で入浴前後の角層水分量の推移を観察した。加えて保湿化粧品の塗布の有無で角層水分量を比較した。

    結果 無塗布の対照側では入浴で急速に角層水分量が増加したのち急速に減少し出浴10分を過ぎると入浴前値程度になった。保湿化粧品を塗布すると浴後1分~60分までの間のすべての測定値で無塗布と比較し角層水分量が有意に増加した。

    考察 保湿化粧品は入浴後の皮膚の乾燥を防ぐ一定の効果があると考えられた。

  • 石澤 太市, 伊藤 要子, 鳥居 和樹, 綱川 光男, 谷野 伸吾
    2018 年 39 巻 p. 6-14
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/10/26
    ジャーナル フリー

    背景・目的 入浴の目的は、身体の清浄、温熱、疲労回復等が主で、中でもリラックスすることへの期待が大きい。リラックスする入浴法として、ぬるめの湯に入浴し副交感神経活動を優位にすることが知られている。また、入浴剤使用によりリラックスすることの報告も多い。しかし、若年者と高齢者では暑熱刺激に対する反応が異なることが知られており、各年代に応じたリラックスするための入浴法は示されていない。そこで、若年者から高齢者までの男女を対象として、リラックスするための入浴法を提案することを目的に、入浴時の体温の変化量と唾液アミラーゼ活性値から検討した。

    方法 20から69歳までの男女58名を対象に、日常の入浴習慣や健康状態等について質問した後、40℃の湯に15分間の全身入浴を行い、浴後30分間安静に保った。試験開始から終了までは、5分毎に舌下温度を測定し、試験前と終了時に唾液アミラーゼ活性値測定および主観評価を行った。

    結果 入浴15分後の体温の変化量をもとに、低値群・中央群・高値群の3群に分け、唾液アミラーゼ活性値の変化との関連を解析した。その結果、試験後の唾液アミラーゼ活性値は、体温変化が1.14℃上昇した中央群のみ低下し、主観評価のリラックス感も他群と比較し有意に高かった。また、体温変化が1.62℃上昇した高値群は、他群と比較し有意に息苦しさを感じた。入浴による体温の変化量への影響は、年齢と有意な負の相関を認め、性別では、男性が女性と比較し有意に体温上昇が高かった。

    考察 唾液アミラーゼ活性値は交感神経活動由来のストレス指標である。中央群でのみ入浴後に唾液アミラーゼ活性値が有意に低下した。このことより、入浴時の体温が約1.1℃上昇することがリラックスするのに適した入浴法であり、体温が約1.6℃上昇すれば息苦しさを感じることが示唆された。そこで、年代および性別にリラックスすることができる入浴時間を推定することができた。リラックスに適した入浴時間を知ることは、入浴の効果を実感することができるばかりでなく、安全な入浴にも繋がると考えられる。

助成研究
  • 坂井 隆浩
    2018 年 39 巻 p. 16-21
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/10/26
    ジャーナル フリー

    背景・目的 温泉療法は、酸化ストレスに関連する疾患の症状を改善する効果がある。そのため、温泉には酸化ストレスを制御する作用があることが推測される。このことから、本研究では、in vivoにおいて酸化ストレスを定量化できる実験方法により、10種類の泉質が酸化ストレスに与える影響を検討した。

    方法 10種類の泉質に、酸化ストレスを誘導したマウスを25℃および41℃の温度条件で10分間入浴した。これを24時間間隔で合計3回行った後、in vivoイメージングにより酸化ストレスを検出し、温熱と泉質が酸化ストレスに与える影響を評価した。

    結果 温熱によって誘導されたHSP72は、酸化ストレス抑制効果がある可能性に加え、硫黄泉(硫化水素型)は酸化ストレス抑制効果、単純放射能泉は酸化ストレス誘導効果があることが示唆された。

    考察 硫黄泉(硫化水素型)の酸化ストレス抑制効果は、硫化水素とHSP72を介する抗酸化酵素の相互作用によることが推測される。その一方で、単純放射能泉の酸化ストレス誘導効果は、ラドンがROSを生成することに起因すると考える。

  • 久田 孝
    2018 年 39 巻 p. 22-29
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/10/26
    ジャーナル フリー

    背景・目的 日本国内の沿岸地域で、海藻風呂、特にカジメ風呂が伝統的に利用されてきた。カジメ類はミネラル、海藻ポリフェノール含量が高く、機能性食品の素材として非常に有望である。これらの機能性成分は海藻風呂でも有効と考えられるが、まだ詳細な検討はされていない。そこで本研究では、これらの機能性成分について、海藻風呂濃度での生理活性を明らかにすることを目的とした。

    方法 文献やウェブ情報より全国で海藻風呂を提供している機関、使用法、現地の様子を調査した。乾燥アラメEisenia bycyclisの熱水抽出液について、海藻風呂濃度における表皮菌数、肌水分に及ぼす影響、また抗酸化特性を検討した。

    結果 千葉県、茨城県、三重県、石川県などでカジメ風呂が提供されており、太平洋側ではアラメが多く使用されている。アラメ風呂の濃度において、粘度、抗菌性、肌水分に及ぼす影響は顕著ではなかったが、抗酸化性、特にスーパーオキシドアニオン (O2-) ラジカル消去能は顕著であった。

    考察  O2-ラジカルは生体内で最初に発生する活性酸素で、その抑制が活性酸素による様々な損傷から細胞を保護すると考えられている。今回示されたカジメ風呂濃度でも十分にその機能が期待できることから、今後、表皮における O2-ラジカル消去能が実際の肌および身体全体の健康に及ぼす影響について検討する必要がある。

  • 榎本 敦, 深澤 毅倫
    2018 年 39 巻 p. 30-36
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/10/26
    ジャーナル フリー

    背景・目的 古くから温熱療法は抗腫瘍効果や放射線による治療効果を亢進させる働きがあることが知られている。温熱に関してはタンパク質の変性を誘導するものの、何故、再合成や再構成が可能なタンパク質の一時的な構造的変化が細胞致死あるいは放射線増感を引き起こすのかは未解明な点が多い。本研究では、温熱に対して感受性が高く、細胞致死あるいは放射線増感に直結する原因タンパク質を分子生物学的・生化学的アプローチにより同定し、温熱療法の持つ抗腫瘍効果における真の標的を明らかにするとともに創薬に向けた土台を構築する。

    方法 様々なヒト培養細胞を用いて温熱処理によるタンパク質の挙動を網羅的に解析し(プロテオーム解析)、温熱処理に感受性があるタンパク質を探索する。次に分子生物学的手法によりそのタンパク質の過剰発現・発現抑制による細胞の増殖・生存への影響を評価し、真の温熱標的因子の同定を目指す。

    結果 プロテオーム解析により、温熱特異的に発現量が低下する因子としてSerine-Threonine Kinase 38 (STK38)を同定した。温熱によるSTK38の発現量低下はタンパク質分解酵素の阻害剤であるALLNなどによって抑制された。さらに遺伝子操作によるSTK38の発現抑制は癌細胞の増殖能を低下させることが判明した。

    考察 温熱処理によるSTK38の発現低下が増殖能を抑制することから、STK38は温熱による抗腫瘍効果の責任因子の1つである可能性が示唆された。

  • 小久保 喜弘
    2018 年 39 巻 p. 37-45
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/10/26
    ジャーナル フリー

    背景・目的 日本人は世界でも最も入浴や温泉に入る人種といわれているが、一般住民を対象とした日常的な入浴に関する疫学研究がほとんど見られない。そこで、都市部地域住民を対象に入浴の実態についてアンケート調査を行い、今後のわが国の適切な入浴形態を提示することを目的とする。

    方法 都市部地域住民を対象に入浴の詳細な実態アンケート調査を行った。1592名の有効回答が得られた。このアンケートと最近実施した健診データとを突き合わせた。メタボリックシンドロームは、国際標準の基準を用い、その構成因子が3つ以上ある場合メタボリックシンドロームと定義した。入浴の各要素とメタボリックシンドロームの構成因子との関係は、性年齢調整のロジスティック回帰モデルを用いて解析した。

    結果 入浴はほぼ毎日入る方が過半数いた。毎日入らない群の方が、夏季にメタボリックシンドロームのリスクであった。夏季はシャワーを使う傾向が、冬季は湯船につかる傾向が強かった。入浴時間は夏の方が短く、若い世代の方がより短い傾向がみられた。夏期の入浴時間が20分間以上の群で、メタボリックシンドロームの危険度が0.63と低かった。入浴時間帯は、夏季で特に男性が夕食前に入浴する方が4割いて、女性は夕食後就寝前に入る傾向がみられた。一方冬季にシャワーを使用する群でメタボリックシンドロームのリスクが低かった。入浴に心がけていることは、浴室を温めること、かけ湯、早めに汗を拭くことは比較的行われていたが、水分補給の水を持ち込む、血圧の高い時には入浴を控えるということを実際はほとんど行われていなかった。

    考察 今後追跡を重ねて、因果関係のあるエビデンスを出していき、適切な入浴のエビデンスを重ねていく。

  • 程 久美子
    2018 年 39 巻 p. 46-53
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/10/26
    ジャーナル フリー

    背景・目的 我々は、これまでに細胞温度が遺伝子発現を大きく調節する要因の1つである可能性を示す極めて独創的な研究成果を挙げている。本研究では温度に依存した遺伝子発現制御の分子基盤を明らかにし、病態や病因の温度に依存した影響を解明する。そのうえで本研究の成果が温熱療法による体温の変動に依存した新たな治療法や健康法の開発や改良に結びつくことを目指す。

    方法 本研究では、分子生物学的・細胞生物学的実験とバイオインフォマティックスを用いて、温度に依存した遺伝子発現調節機構を解析し、温熱療法によるさまざまな効用の生体における機序を明らかにする。

    結果 生育温度の異なるショウジョウバエとヒトの培養細胞を用いて、マイクロRNAによる遺伝子抑制効率を検討した。その結果、マイクロRNAは塩基対合における熱力学的性質により遺伝子抑制効果が制御されているため、温度に依存した抑制効果を示すことが明らかになった。さらに、化学修飾によりマイクロRNAは塩基対合する相手の遺伝子群が一斉に変わる場合があるだけでなく、熱力学的性質が変化することで、遺伝子抑制効果も大きく変動することがわかった。さらに、マイクロRNA二本鎖のうち、化学修飾により機能するRNA鎖が変換するマイクロRNAが存在することが明らかになった。

    考察 体温や生育温度によって遺伝子発現のパターンが変動する分子メカニズムは不明であった。本研究によりマイクロRNAによる、温度に依存した遺伝子発現制御機構を明らかにすることができた。そのため、少なくとも温熱療法によってマイクロRNAによる遺伝子発現パターンを変動させる機構の一旦を明らかにできたと考える。本研究を土台とし、今後、温度に依存した疾患の原因や治療法の解明に結びつく可能性も期待できる。

  • 秋山 雅代, 大塚 吉則
    2018 年 39 巻 p. 54-61
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/10/26
    ジャーナル フリー

    背景・目的 本研究の目的は、シャワー+足湯群とシャワー群の体温変化と心理的評価から温熱効果を分析し、足湯を使ったシャワーの温熱効果を検討した.

    方法 研究デザインはクロスオーバーデザイン。20代の健康な女性10人を対象に、足湯の有無を条件にシャワー前後の鼓膜温、前腕皮膚温、足背皮膚温を測定した. 主観的評価は気分プロフィール検査 (POMS2短縮版)、温浴感4件法、自記式アンケートにて実施した. シャワーは被検者にセパレートタイプの水着を着用してもらった。椅子座位の姿勢で、検者が背部、上肢、胸、腹部、大腿の順に、40-41℃の温水を10分間繰り返し掛けた. 足湯は両膝下10cmまで40-41℃の湯に浸漬した.

    結果 シャワー後の鼓膜温、皮膚温は両群が上昇した。足湯による体温の変化に有意な差はなかった. シャワー前後の気分プロフィール検査では、両群に「疲労-無気力」「緊張-不安」に改善があった。足湯併用群にのみ「活気-活力」に有意な増加が認められた (p=0.02).

    考察 足湯を使ったことによる温熱効果は得られなかったが、「活力-活気」の改善は、温熱効果以外にも足湯併用の意義があると考えられる。

  • 田中 信行, 皆川 翼, 大久保 健作
    2018 年 39 巻 p. 62-67
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/10/26
    ジャーナル フリー

    [Background]

    Hie-syndrome is common in females and complains of severe chillness of the hand and foot in cold season. Although endocrinological or autonomic disfunctions were proposed, there were few reports regarding the etiology of Hie-Syndrome. From the findings of chillness and dark coloring of the extremities, we supposed increased venous contraction by cold. Then we studied the effects of cold exposure on body temperature, venous gas and the effects of phosphodiesterase-5 inhibitor Tadarafil (TDF).

    [Subjects and Methods]

    Subjects were 10 females with Hie-syndrome and 7 females without Hie under 50yrs. Studies were done at November to March, on outdoor temperature below 12 centi-degree. A Teflon tube was placed in cubital vein to take blood for venous pO2 and pCO2 measurement. Finger pulse-oximeter was set, and sulingual temperature was examined by electronic thermistor and limb temperature by ultra-red ray thermometer after 30min sitting in warm room and cold room (12 degree). Then 10mg TDF was administered, and same studies were done on next day.

    [Results]

    Finger tip O2-saturation and sublingual temperature at warm room (23℃) was normal in both groups. Hie group showed, compared to No-Hie group, marked decrease in sublingual and limb temperature and venous pO2 pressure at cold room (12℃). The improvements after 10mg TDF on limb temperature and venous pO2 and pCO2 during cold exposure were observed more prominently in Hie-group.

    [Consideration]

    Normal finger oximeter (arterial O2-saturation) in both groups, marked decrease in body temperature and venous pO2 after cold exposure in Hie-syndrome indicated that Hie-syndrome has not arterial but venous abnormality. Prominent improvement of body temperature and venous gas by TDF seem to highly suggest excess cold contraction of peripheral vein in Hie-syndrome, possibly due to disturbed venous NO-synthesis.

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