【目的】アジアワーキンググループの診断基準に準じて初診断時における下咽頭がん男性患者のサルコペニア(広義のサルコペニア)有病率を調査し, その特徴をみた.
【方法】2016年2月から2018年10月までに当科にて下咽頭がんと診断され, 65歳以上かつInbody及び握力が測定できた男性23人とした.低骨格筋量と低握力ともに認められた症例をサルコペニア(S群),低骨格筋量のみ認められた症例をプレサルコペニア(Pre-S群),いずれも認められない症例を非サルコペニア(Non-S群)に分類し,年齢,がんステージ,ブリンクマン指数,初診断時の身体測定値や血液検査を比較検討した.
【結果】8人(35%)がサルコペニアであった.S群は初診断時の体重, 筋肉量, 血清Alb, TTR, ALTが有意に低く,CRPが高値であった.がんステージや体重減少,重複がんの有無は3群間に差はなかったが,S群は死亡率が有意に高率であった.
【結論】下咽頭がん患者の約4割が広義のサルコペニアを有し, 治療後の死亡率にも影響していた.下咽頭がん患者の体重減少は最も生存率に影響する因子との報告があるが,自覚的な体重減少がなくとも,初診断時にサルコペニアの有無を評価することは臨床アウトカムに寄与する.
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