背景:重症の大動脈弁狭窄症(AS:aortic stenosis)患者に対する経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR:transcatheter aortic valve replacement)施行後に,無症候性人工弁血栓症(SLT:subclinical leaflet thrombosis)が報告されているが,その評価方法に関して詳細は不明である.
目的:TAVR 術後のSLT について多列検出器型CT(MDCT:multidetector row computed tomography)と経胸壁心エコー図検査(TTE:transthoracic echocardiography)を用いて評価する.
方法:2016 年9 月から2019 年10 月に当院で重症AS に対してTAVR を施行し,術後30 日以内にMDCT とTTE の実施が同時期に可能であった80 例を対象にSLT を評価した.
結果:対象症例80 例中,TAVR 術後早期に実施したMDCT にて人工弁の低輝度弁尖肥厚(HALT:hypoattenuated leaflet thickening)を19 例(24%)に認めた.中等度以上の弁尖可動性低下(RELM:reduced leaflet motion)を伴うHALT(+)群は9 例(11%)であった.TTE ではSLT を指摘できた症例は2 例のみであった.HALT(+)群のTTE の指標は,人工弁位最大流速:2.25 ± 0.47 m/sec,平均圧較差:10.9 ± 4.4 mmHg,有効弁口面積(EOA:effective orifice area):1.47 ± 0.47 cm2,EOA index:1.01 ± 0.30 cm2/m2 であり,HALT(−)群と比較して有意差は認めなかった.
結論:TAVR 術後早期において,MDCT 上24%の症例にHALT を認め,11%の症例は中等度以上のRELM を伴うHALT が出現した.TAVR 術後早期にTTE に加えMDCT を追加評価することによりSLT を感度良く検出することができた.
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