背景:現在,褥瘡に対する電気刺激による治癒促進の可能性が報告されている(褥瘡予防・管理ガイドライン推奨度B)が,電気刺激治療のプロトコールが定まっていない.電気刺激療法の確立には,種々の電気刺激条件に対する細胞反応の変化の計測が必要とされる.
目的:本研究では,培養ヒト皮膚線維芽細胞に各種電気刺激を与え,VEGF mRNA 発現量およびⅠ型コラーゲン放出量に着目し,種々の電気刺激条件との関連を検討した.
方法:電気刺激条件は,方向(水平と垂直),矩形波(直流波とパルス波),強度(0,100,200,400 μA の4 強度)とした.刺激時間は40 分に設定し,パルス波の条件はパルス幅250 ms,周波数2 Hz とした.VEGF mRNA 発現量は逆転写real-time PCR,Ⅰ型コラーゲン濃度は ELISA 法を用いて測定した.
結果:VEGF mRNA 発現量は,刺激方向および矩形波による違いを認めず,何れも刺激強度400 μA で有意に増加した(p < 0.05).Ⅰ型コラーゲン分泌量は400 μA の水平方向直流刺激で有意に増加した(p < 0.01).
結論:VEGF mRNA の発現量およびⅠ型コラーゲン分泌量は電流量依存性に増加し,特に400 μA で最も増加した.有効な電気刺激方法のさらなる検討が必要である.
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