地下鉄の異高型複断面トンネルの耐震性については,具体的な検討方法が示されていないことから,模型実験により地震時の動的挙動について検討した.単線箱型断面と異高型複断面の模型トンネルをせん断土槽内の模型地盤に設置し,初期状態の模型トンネルの断面力を確認したのちに,鉄道構造物の耐震設計で用いられるレベル2地震動を時間圧縮した入力波により加振した.その結果,異高型複断面では中壁に大きな曲げモーメントとせん断力が発生するとともに,載荷方向によって変形モードが異なることを把握した.また,三次元FEM解析による動的実験再現解析を行い,解析結果と実験結果が概ね同様となることを確認し,解析による検討方法の確立に必要な知見が得られた.
地下鉄開削トンネルの縦断方向の一部に大きな沈下や沈下に伴うひび割れが多く見られ,その使用にあたって耐荷性能を精度よく評価することが課題となっていた.そこで,鉄筋ひずみの調査を行ったところ,トンネルの中立軸位置が設計計算の値と大きく異なることがわかった.この要因として,トンネルにひび割れが生じることでトンネル縦断方向に伸長する挙動が,両端の変状が起こっていない部分により拘束されることにより見かけの軸力が発生するといったメカニズムを想定し,軸力の算定方法を検討した.さらに,この軸力を用いて構造計算を行った結果,見かけの軸力を与え,トンネル形状を再現した疑似3次元モデルを用いることで,トンネルのひび割れ状況などの変状を精度よく再現できることがわかり,軸力の発生メカニズムの妥当性が確認できた.
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