高速道路トンネルでは,通行車両の視環境の確保,視線誘導および照明効果の向上を目的として内装工が設置されている.従来,この内装工にはタイル直張り工法,パネル浮かし張り工法および塗装が適用されてきた.これまで設置されている内装工をみると,タイルのはく離,パネルの破損,固定金具の腐食および塗膜のはがれ等の変状がみられる.そこで,筆者らはタイルやパネル等を主材とする内装工に代替するものとして粘着シートを用いた内装シート工の適用を考えた.本稿は粘着シートの適用にあたり,重要な基本性能の一つである覆工コンクリートとの付着性を引きはがし粘着力としてとらえ,その基本性能を確認するための試験法と現場適用性について検討したものである.
地下空洞や山岳トンネル建設時の掘削面である切羽の安定性は,地下空間建設時の安全に直接影響を与える問題であり,これまで数多くの研究が行われている.しかし,地下空間掘削によって出現する切羽面は当然不均質であるにも関わらず,これらの研究の多くは地山物性の空間的な不均質性を考慮しない解析が一般的である.そこで本研究では,ランダム場理論に基づき主に軟岩地山における地山物性の空間的な不均質性を考慮したトンネル切羽の安定解析を実施した.その結果,地山の不均質程度の違いにより切羽面の変位や切羽周辺地山の最大せん断ひずみに及ぼす影響が変化することがわかった.また,地山物性の空間的な不均質性がトンネル切羽の安定性に及ぼす影響を適切に評価する必要がある地山条件を明らかにした.
著者らは,長きにわたり地下空間を成す地下駅構内の合成鋼管柱の支承板として多用されてきた鋳鋼製朝顔形支承板に代わる鋼製積層型支承板の開発と標準化を行っている.構造的には,支承板の設計板厚に対して径の異なる鋼製平板を積層することにより,朝顔形の断面形状と構造特性の再現を試みた.本論文では,東京メトロにおける標準規格タイプをプロトタイプとした実大載荷実験と三次元FEM解析によるシミュレーション解析により,現行設計計算式の検証を行い,鋼製積層型支承板の設計結果を各規格タイプの設計板厚を寸法表としてまとめた.また,設計支圧反力の計算に積層高さに応じた有効外径なる新たな支承板外径を導入することによる設計合理化の可能性について言及した.
身体動作をともなう自己のアバタの操作を可能とするVRシステムを用いて,地下街で生じた火災に遭遇した際の人の行動特性を明らかにする.実験 1ではVR空間上の煙中での避難口誘導灯の視認性が現実空間のそれと同程度となるように,避難口誘導灯までの距離を変化させ,避難口誘導灯が視認できるよう研究対象者が煙の濃度を調整した.実験 2では実験 1の結果を踏まえてVR空間上に再現された火災が発生した地下街で研究対象者がとる行動を計測した.その結果,研究対象者の多くは最寄りの出口から避難したが,幾人かは離れた遠くの出口から避難した.これらは研究対象者の避難口誘導灯の使い方や,人が空間的行動をおこなう上で予期せぬ事態に遭遇する際に用いられるサーヴェイ・マップの基礎となる認知地図の形成に個人差があることが原因と考えられる.
近年,都市で発生している水害では河川から溢れた氾濫水が都市部の低地や地下空間に浸入し,甚大な人的被害が生じている.これまで地下空間での避難対策については,浸水シミュレーションを駆使した多くの既往研究がみられ様々な場で報告がなされている.しかしながら,これらの研究は1人で流水に向かって上流向きに歩行して避難する状況を対象としているため,多人数で避難したり,流水を垂直に横切って避難するときの危険性を考慮していない.本研究では人型模型を用いて流水中の人体に掛かる力を通路幅,人数,人間の身体の向き,姿勢を変化させて計測し,特に狭い地下通路内での浸水時の水難事故の危険性について調べた.さらに実験データをもとに避難限界指標となる危険流速―水深判読図を作成し,横断避難時の転倒危険性,転倒したときの流される危険性を評価した.
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