本論文は、自閉症児をもつ母親のインタビューを再考することによって、障害の有無にかかわらず子育 てをする母親の心のバリアについて検討を試みたものである。5名の母親の語りを修正版グラウンデッド・ セオリー・アプローチにより分析したところ、13概念が生成され、6カテゴリーが抽出された。「わからな い」、「策がない」、「できないところが見える」という【目の前の問題】と、「子どものことを否定される」、 「母親のことを否定される」、「話せない」という【否定】という2つに、【かわいいと思えない】という感 情が絡み合い、「孤独・不安」という【心のバリア】が巨大化する。一方、「わかる」、「具体策」、「子ども が落ち着いてくる」という【問題への対処可能性】と、「子どもの肯定」、「母親の肯定」、「話せる人の存在」 という【つながりから生まれる肯定】によって、「孤独・不安」という【心のバリア】は小さくなっていく、 というストーリーが見出された。母親の子育てのバリアに第三者の在りようが大きく関与することが示唆 された。以上のことから、子育てのバリアフリーを目指した具体的な実践として、①母親が子どものこと を「わかる」ことを支援すること、②具体策を一緒に考えること、③子どもの発達への直接的なアプロー チ、④子どもの肯定、⑤母親の肯定、⑥話せる人の存在、という6つの提案が導き出された。
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