子育て研究
Online ISSN : 2189-7581
Print ISSN : 2189-0870
7 巻
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 上村 佳世子, 柿沼 美紀, 静 進
    2017 年 7 巻 p. 3-14
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/11/09
    ジャーナル フリー
    本稿は、文化・地域の異なる自閉症スペクトラム(ASD)児と定型発達(TD)児の子どもに社会的葛 藤場面を暗示する線画を提示して、視線の動きや母親との相互行為のなかでの発話や指さしの特徴を検討 した一連の研究を概観した。その結果、子どもたちがどのような要因を抱えていても、親は主導的に語り 子どもがそれに応じるという相互行為が成立していた。ASD児は、視線の動きが断続的で対象人物や対 象物を見る時間が短いことから、情報処理のあり方がTD児とは異なること示唆された。母親側の発話や 指さしにおいてもTD児の母親とは違いが示された。一方で、母子相互行為については、日本、中国、米 国間に、また日本国内の東京、山形、沖縄においても母子の語り内容や指さしに文化・地域差が示された。 このような語りや非言語行動の個人差は、社会的場面の情報処理のしかたや対処の枠組みの違いに反映す るものと考えられる。それぞれの子どもの生まれもった神経学的要因とその個体が生活する環境の文化的 要因によって個人差は形成されるが、この差異を多数者側の視点からのみとらえることなく、背景要因を 十分に理解した上でその特徴や発達を見据えていくことが必要と考えられる。
  • 細川 美幸
    2017 年 7 巻 p. 15-23
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/11/09
    ジャーナル フリー
    本論文は、自閉症児をもつ母親のインタビューを再考することによって、障害の有無にかかわらず子育 てをする母親の心のバリアについて検討を試みたものである。5名の母親の語りを修正版グラウンデッド・ セオリー・アプローチにより分析したところ、13概念が生成され、6カテゴリーが抽出された。「わからな い」、「策がない」、「できないところが見える」という【目の前の問題】と、「子どものことを否定される」、 「母親のことを否定される」、「話せない」という【否定】という2つに、【かわいいと思えない】という感 情が絡み合い、「孤独・不安」という【心のバリア】が巨大化する。一方、「わかる」、「具体策」、「子ども が落ち着いてくる」という【問題への対処可能性】と、「子どもの肯定」、「母親の肯定」、「話せる人の存在」 という【つながりから生まれる肯定】によって、「孤独・不安」という【心のバリア】は小さくなっていく、 というストーリーが見出された。母親の子育てのバリアに第三者の在りようが大きく関与することが示唆 された。以上のことから、子育てのバリアフリーを目指した具体的な実践として、①母親が子どものこと を「わかる」ことを支援すること、②具体策を一緒に考えること、③子どもの発達への直接的なアプロー チ、④子どもの肯定、⑤母親の肯定、⑥話せる人の存在、という6つの提案が導き出された。
  • 佐藤 嘉代子
    2017 年 7 巻 p. 24-36
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/11/09
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は、保育所5歳児クラスの「子どもと哲学する時間」の実践をとおして園児がどのように変容したのかを明らかにすることである。「子どもと哲学する時間」で参与観察し、ビデオカメラによる観察記録からトランスクリプトを作成し、加えて、観察後の園長Cと担任である保育士Bのインタビュー記録をもとにしたフィールドノーツを作成した。これらのデータをもとに以下2つの研究成果が得られた。 第1は分析の段階で得られた、極めて発言数が多い園児Aが哲学的対話により育まれた探究の共同体のなかで仲間の信頼を得る存在に変容したことである。第2は「子どもと哲学する時間」は園児Aや他児の変 容のみならず、保育士B及び園長Cの子ども観及び保育それ自体の意識の変容をももたらすものであったことである。「子どもと哲学する時間」は、子どもたちに生活のなかの不思議を探究し対話を楽しむことをもたらすものとなり、また保育士Bへの信頼に基づいた安全で寛いだ対等に語りあえる対話の場ともなっていた。
  • 須貝 香月
    2017 年 7 巻 p. 37-44
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/11/09
    ジャーナル フリー
     「発達障害者支援法」が平成17年に施行され、障害の早期発見・早期対応の体制づくりとともに家族を 含めたトータルな支援が進められている。しかしながら早期発見の難しさや、性差によって診断の時期が異なるという問題が指摘されている。親が支援を求める時期を明らかにすることを目的として自発的にペアレントトレーニングに参加している発達障害児の親を対象に調査紙を用いて、支援を求めるときの児の年齢や性別の分布を明らかにした。さらに、支援を受けに来る親の特徴として育児不安や抑うつ傾向につ いて調査し、児の性別により比較した。親の受講開始時の児の平均年齢や親の抑うつ傾向に性差による有意な差は認められなかった。しかし、4歳の男児の親が突出して多いのに対して女児の親はある年齢で特に多いということはなく、幼児から中学生まで広範囲にわたっていた。女児の親は児に対する否定的育児感情や育児多忙感が男児の親よりも有意に高く、児に対してネガティブな反応が多かった。発達障害児の早期発見・早期療育がうたわれ、その体制づくりが中心となっている現在、年齢が高じても子育てに困る親への支援の構築の必要性が示唆された。
feedback
Top