睡眠と環境
Online ISSN : 2758-8890
Print ISSN : 1340-8275
17 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説論文
  • 福田 一彦
    2023 年 17 巻 2 号 p. 1-8
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー
    睡眠に関わって生じる心理体験についてそれらの生理学的背景とともに議論した。夢は古来より様々な形でヒトの生活に影響を与えて来たが、近代以降に最も影響力の有ったのは精神分析学の登場だろう。しかし、精神分析学の背景理論は科学的に実証されたものとは言い難く、現在の科学的な夢研究に対して強いバイアスを生じさせている事も否定できない。1953 年にREM 睡眠が発見され夢見という心理体験と密接な関連があることが明らかにされたが、夢体験とレム睡眠の関係については完全な合意が形成されているわけではない。夢体験はREM 睡眠でのみ起こるのかという点について過去の研究を概観した。これまで夢研究は必ずしも正当な評価を受けてきたとは言えないが、最近になって意識の座を探る一つの手段として夢の研究が注目されている。通常の夢以外の心理体験として明晰夢と金縛り(睡眠麻痺)について、その生理学的背景の類似について議論した。最後に、睡眠を人為的に操作して明晰夢を誘発することが安易に行われている事に対して批判的に検証を行った。
  • 杉山 渉, 吉田 春香, 大島 彩, 高橋 彩
    2023 年 17 巻 2 号 p. 9-16
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー
    病院・介護施設の排泄ケアでは,過去は「頻回におむつ交換を行うのが良いケア」として,日中夜間関わらず2 時間おきなどの頻回なおむつ交換が実施されていた。近年では,利用者様のQOL向上・介護職員の人材不足などの観点から,おむつ交換回数の削減,特に夜間のおむつ交換回数削減が進んでいる。  本総説は,病院・介護施設職員の「排泄ケアと睡眠」の意識調査,病院・介護施設でのおむつ交換の実態、大人用紙おむつ仕様の変遷を概説した。また,夜間のおむつ交換削減事例も紹介する。利用者様のQOL向上に向けて,夜間のおむつ交換で睡眠を阻害するリスクを軽減していくことが必要になる。
  • 白川 修一郎, 松浦 倫子
    2023 年 17 巻 2 号 p. 17-25
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー
    旅の目的は様々であろう。美しい景色を楽しむため,地方の美味しい食事に惹かれて,旅先の文化や建造物に興味があって,友人や家族と楽しい時間を過ごすため,気分転換やストレス解消など,数え上げれば切りがない。本項では,ストレス解消が目的の旅で逆にストレスをためてしまう状況の注意点について述べる。冬期に気分が強く落ち込む人たちがいる。次に,そのような人たちに対する南国への転地の効用について述べる。新型コロナウィルスの感染流行が下火になり,新型コロナウィルスの国の指定も5 類感染症に移行した。今後,海外への旅行者が増えると考えられる。日本は極東に位置し,アメリカやヨーロッパに旅行する際には,時差ぼけに悩まされる人も多い。最後に,海外旅行の際の時差ぼけの原因と対策について記述する。
  • 荒川 雅志, 田中 秀樹
    2023 年 17 巻 2 号 p. 26-34
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー
    ウェルネスとは健康を広義に捉えた概念で,人生の質を高める,豊かな人生をデザインしていくライフスタイル全般が対象である。様々な分野からの参入が見られる世界のウェルネス市場は,新型コロナウィルス感染拡大前 2020 年時点で 4.4 兆ドルと極めて巨大となるなか,ウェルネスをテーマとした旅行形態であるウェルネスツーリズムの市場成長が特に顕著であることが国際ウェルネス機構をはじめ各種調査で報告されている。  本総説では,アフターコロナに世界中で需要高まるウェルネス産業の世界市場を概説し,睡眠産業市場の動向をふまえながら,新しい睡眠健康アプローチとして旅先での快眠に寄与するメニューで構成したウェルネスツーリズムについて事例を交え解説する。
解説
  • ~ イタリアから学ぶ避難所環境のあり方 ~
    水谷 嘉浩
    2023 年 17 巻 2 号 p. 35-42
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/02/22
    ジャーナル フリー
    2011年3月11日に発災した東日本大震災の直後,避難所で多くの人が寒さによって亡くなったが,その寒さを防ぐために段ボールベッドは考案された。その後,長期間にわたり避難所の床に寝ることは様々な健康被害を引き起こすことがわかり, 避難所をベッド化する活動を開始した。段ボール会社は全国に多数所在しており,短期間に雑魚寝を解消できるのが段ボールベッドの利点である。しかし,避難所への導入は膨大な作業であり難易度が高い。そこで,事前に導入手順の検討を行ったうえで,行政と「段ボールベッドに関する防災協定」を締結することで全国的に導入が可能となった。
     避難所は,本来は安全な場所であるはずであるが,二次的な健康被害で亡くなる被災者は未だゼロになっていない。長期化する避難生活に於いても健康を維持するためには,段ボールベッドによる雑魚寝の解消だけでは不十分であり,加えて食事やトイレなど更なる生活環境の改善が必要である。そこで世界的な先進事例であり,災害関連死はゼロとされるイタリアの災害支援を参考にして,トイレ・キッチン・ベッドを 48 時間以内に避難所に届ける「T K B48」を目標に,災害関連死ゼロを実現していくことが求められる。
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