睡眠と環境
Online ISSN : 2758-8890
Print ISSN : 1340-8275
16 巻, 2 号
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原著論文
  • 大平 雅子, 丸茂 亜美
    2022 年 16 巻 2 号 p. 1-9
    発行日: 2022/12/31
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー
    近年,睡眠環境を向上させる要因の一つとして音楽が注目されている。しかしながら,これまでの研究では,あくまでも音楽が夜間睡眠にもたらす影響を検討したものや,音楽療法としての効果を検討したものが中心であり,仮眠への影響については未だ十分な検討がなされていない。本研究では,リラックス効果が示されている楽曲を仮眠前に聴取することが,その後の仮眠にどのような影響を及ぼすのかを生理・生化学指標等の多様な指標から検討することを目的とした。本研究は対象者内実験計画により,対象者13 名(21.2 ± 0.6 歳)がコントロール(無音)条件,音楽聴取条件の2条件両方に参加した。音楽聴取条件では,楽曲をスピーカーにて50dB で流した後,14:00 から20 分間の仮眠をとらせた。先行研究において,呼吸数や心拍数が有意に減少することがみとめられた楽曲を使用したものの,本研究では,主観的気分,自律神経活動,睡眠変数,唾液中コルチゾール濃度や仮眠後の認知課題の成績に関して,音楽聴取による影響はみとめられなかった。さらに,本研究では予想に反して,音楽聴取条件では,仮眠前よりも仮眠後の主観的な眠気が有意に強くなっていた。しかしながら,これは楽曲そのものによる効果ではなく,仮眠時間の設定による影響であることが示唆された。本研究では,一楽曲が仮眠に及ぼす影響について検討したに過ぎず,今後提示する音楽の種類や対象者の嗜好や仮眠の長さやタイミングを考慮した上で,更なる検証を重ねる必要がある。
  • 和田 侑奈, 松本 真希, 小山 恵美
    2022 年 16 巻 2 号 p. 10-19
    発行日: 2022/12/31
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,統制環境下で複数夜実施した睡眠計測実験から得られた,同一寝具環境に関する印象評価の各因子と,客観的な睡眠指標や主観的な睡眠感との関係性について検討することを目的とした。対象者は睡眠に関する問題のない若年成人男性20 名で,そのうち15 名の各5 夜分の記録を解析対象とした。25 項目の形容詞対で構成される印象評価質問紙を自作して因子分析を実施し,得られた各因子得点と客観的睡眠状態や主観的睡眠感との相関を解析した。結果として,寝具環境に関する印象評価は3 つの因子が抽出され,“寝具親和性” “寝具物性” “明視性” と解釈した。相関分析の結果,第一因子(寝具親和性)では起床時の主観的睡眠感と有意な相関がみられ,第二因子(寝具物性)では Stage 3 に関連する客観的睡眠状態との有意な相関がみとめられたが,第三因子(明視性)と睡眠感や睡眠状態との相関はみられなかった。これらの結果は,先行研究では言及されてこなかった手法によって,寝具印象評価についての新しい知見をもたらしたと考えられる。
  • ― 介護施設職員における勤務形態別比較―
    山内 加奈子
    2022 年 16 巻 2 号 p. 20-25
    発行日: 2022/12/31
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,介護施設で働く職員に対して,勤務形態別にカフェイン含有栄養ドリンクの摂取と睡眠による休養との関連について検討することである。介護系施設で働く職員を対象に自記式調査を実施し607名から回答を得た。勤務形態別に,「睡眠で休養が十分とれている」を従属変数とし,フェイスシート,勤務形態(日勤のみ/ 交代勤務),睡眠時間,生活習慣(カフェイン含有栄養ドリンクの摂取,など),厚生労働省が推奨するストレスチェック,周囲のサポート状況を独立変数としたロジスティック回帰分析を行った。その結果,睡眠で休養がとれていることに関連したのは,日勤のみ群では,カフェイン含有栄養ドリンクの摂取の少なさ,平均睡眠時間の長さ,ストレスチェックにおける心身のストレス,飲酒頻度の少なさであった。交代勤務群では,カフェイン含有栄養ドリンクの摂取の多さ,平均睡眠時間の長さが関連した。ただし,これは横断研究のため,因果関係を明らかにした更なる研究が必要である。
総説論文
  • 駒田 陽子
    2022 年 16 巻 2 号 p. 26-31
    発行日: 2022/12/31
    公開日: 2023/09/01
    ジャーナル フリー
    COVID-19(coronavirus disease 2019, 新型コロナウィルス)パンデミックは,わたしたちの生活を大きく変え,睡眠や心身の健康にさまざまな影響を与えている。本総説は,COVID-19 と睡眠の関係について,(1)感染症や感染症拡大防止のための社会規制が睡眠に与えた影響,(2)睡眠が感染症やワクチン効果に及ぼす効果について概説した。ワクチンや薬の開発・普及によってCOVID-19 が首尾よく抑えられたとしても,この先も新規感染症は次々に登場するだろう。また感染症だけでなく,地震や洪水などの自然災害で避難生活を強いられることもある。今回の経験から学び,パンデミックに対する備えを強化するとともに,非常時に睡眠健康を保つための対処方法を考え,社会に広めていく必要がある。
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