睡眠は,児童・生徒の健康ならびにウェルビーイングの本質である。しかし,
既報では,睡眠不足が,世界各国の子どもに共通してみられること,広範囲に及ぶ身体的・
精神的健康の悪化と関連することが指摘されている。これら睡眠不足によって児童・生徒
に多くの影響が及ぶことを考えると,彼らやその保護者,教職員に健康睡眠に関する教育
と,そのような睡眠の確保を促すツールを提供していくことが不可欠である。そこで本稿
では,児童・生徒に共通する睡眠の問題を概観するとともに,学校場面での睡眠教育の実
践例について報告する。児童・生徒に共通の睡眠問題,学校場面での睡眠教育に関するレ
ビューの結果,以下の4 点,(1)睡眠時間は年齢とともに減少することが確認されたが,
特にその傾向は児童期に比べて青年期で著しい,(2)睡眠不足に起因する睡眠負債は,平
日と休日の起床時刻の乖離の引き金となっている,(3)これら睡眠の問題は日中の眠気や
精神的・身体的健康の低下と関連する,そして(4)自己調整法を伴う睡眠教育プログラム
は,児童・生徒の不規則な睡眠習慣,日中の眠気,イライラの改善に効果的である,こと
が明らかとなった。そしてその上で,学校で睡眠教育プログラムを成功させるためのキー
ポイントについて議論した。
抄録全体を表示